14954 中国の防空識別圏設定 ロイターの分析   古澤襄

■軍の対応能力は不十分の可能性
<[香港/北京 27日 ロイター]中国が沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)を含む東シナ海上空に設定した防空識別圏(ADIZ)に支配を及ぼそうとすれば、中国軍は哨戒任務や緊急発進の活動が増えるため、オペレーション面で忙しくなりそうだ。
地域の軍事アナリストや外交官によると、中国の防空レーダー網および哨戒機や戦闘機の活動は、英国の国土面積の約3分の2に当たるADIZをカバーするようになる。たとえ限定的なものであれ中国の行動は地域の警戒を呼び起こし、日本に圧力をかけることになるとの声も出ている。
中国はADIZにおいて識別に適切な協力をしない航空機に対し「防御的な緊急措置」を取ると警告している。
既に中国の対応は試されている。
25日には米軍のB52戦略爆撃機2機が、中国への事前通報なしに尖閣諸島上空を飛行。日本の大手航空会社の航空機は27日、中国当局に飛行計画を提出せずに同空域を通過した。
中国の国防省は、米軍のB52戦略爆撃機2機の飛行について、全航程を監視したと表明。米国防総省は、2機が中国機の監視やコンタクトを受けることはなかったと明らかにした。
日本の政府筋は、公海上空におけるこのような広範囲の空域をカバーするレーダーや戦闘機は中国軍にまだないとの認識を示す。

インターナショナル・インスティチュート・オブ・ストラテジック・スタディーズ(ロンドン)で東アジアの軍事問題を研究する専門家、クリスチアン・レ・ミーレ氏は、中国は艦載レーダーなどにより哨戒能力を拡大することが可能としつつ、依然としてギャップは残ると指摘している。
<日常的には沿岸の防空レーダー活用>
コンサルティンググループ、IHSエアロスペース・ディフェンス・アンド・マリタイムの北京駐在シニアアナリスト、ゲリー・リー氏は設定されたADIZについて、「これが飛行禁止空域ではないことを覚えておかなければならない。中国は存在感を示すためにパトロール範囲を広げる必要はない」と指摘。日常的な活動では沿岸に配備された防空レーダーが活用され、哨戒機や戦闘機は特定の任務で利用されることになるとの見方を示した。
上海周辺の空域や沿岸レーダー局に注目が集まるとみられる。
中国の空軍や海軍航空部隊に関する独立した研究や民間の分析によると、中国軍は戦闘機の「殲─10(J─10)」や「蘇─30(Su─30)」のほか、哨戒機の充実を図っている。
推計によると、哨戒機45機がADIZをカバーしているほか、旧式の「殲─7(J─7)」を含め、最大160機の戦闘機が上海周辺に配備されているとみられる。
哨戒機の大半は国産輸送機「運─8(Y─8)」で、早期警戒、情報収集、船舶や潜水艦の監視といった個別の任務ごとに装備が異なっている。
また、ロシアの「Il─76」を基に開発した早期警戒管制機(AWACS)「空警2000(KJ─2000)」4機が日本や台湾を警戒範囲に収めている。
アジアのある国の香港駐在武官は「中国のAWACSや彼らの能力が、米国やその同盟国の水準に達しているとは思えない」と指摘。「しかし、その水準に達し、活動範囲拡大の効果がフルに発揮されると確信はできるため、われわれは動向に注視している」と述べた。
中国国防省の報道官はロイターに対し、中国の迎撃機がADIZをパトロールする際に武器を搭載するのかどうかについて明言を避け、「(ADIZで)未確認もしくは脅威があると判断した飛行物体に対し、中国側は状況に応じて、それに対処するために識別や監視、管理措置を適時講じるだろう」と指摘。「共同で飛行の安全を維持するため、関係部門には積極的に協力してほしいとわれわれは考えている」と述べた。
(ロイター)>
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