ダム工事中断から関係が冷却、投資を90%激減させて怒りを示したが・・・。
2011年にミャンマーは中国が36億ドルを投じて建設中だったミッソン・ダムをキャンセルした。
なにしろ向こう50年、そのダムが発電する電力の90%が中国へ送電されるという不公平なプロジェクトだった。
直後から、両国関係、じつは冷え冷えとしていた。
2012年、中国は北部山岳地帯で開発中だった銅鉱山の開発を中断した。これは中国のほうが立ち退き保証を少数民族に支払わなかった所為とする説もある。
この中国とミャンマー関係の冷却化というすきま風の間を縫って、突如、ヒラリー米国務長官(当時)がミャンマーを訪問した。
日本からも麻生財務相兼副総理がヤンゴンを訪問し、この風向きの変化を敏感に読んだアジア各国はヤンゴン詣でを始める。中国からの投資激減は、むしろミャンマーにとって歓迎だった。
同時期、中国はミャンマー投資を九割方減らしていた。(ついでに言えば中国の代理人とまでいわれたカンボジアも「防空識別圏」以来、関係が微妙に変化し、フンセン首相来日時(13年12月13日)、日本が提案した「空の安全」共同宣言を支持し、「戦略的パートナー」に格上げされた)。
2012年11月、中国には新執行部が誕生したが、トップセブンのうち、誰一人として現在までにミャンマーを訪問していない。
13年中にティンセイン大統領は中国を二回訪問した。4月にはボーアオ会議に列席し、習近平と会談し、10月にはブルネイで李克強首相との会談が実現している。
しかし中国共産党の高官レベルのミャンマー訪問はまだなく、強いて言えば中央軍事委員会副主席の氾長龍の訪問であり、ミャンマー軍統幕議長のミンアウン・ホランと会談してくらいである。
▼中国、ちかくスーチー女性を北京に招待か
変化が起こった。
中国はミャンマー議会の四大会派それぞれと別個のアプローチを開始し、ちかくスーチー女史を北京に招待する工作を始めているという(アジアタイムズ、12月23日)。
これまで中国は「ノーベル平和賞」には拒否反応を示してきた。しかもスーチーが次期ミャンマー大統領に当選する見込みは薄いが、各派への均等なアプローチ開始という事態には注目してよいだろう。ただし中国に言わせれば、「スーチーも理想主義をすて現実が分かってきたから」とう理由付けをしているそうな。
さて中国の分析予測では、2015年の総選挙によりミャンマーの次期大統領に就任する可能性がもっとも高いのは与党「USDP(連邦団結発展党)」の党首で下院議長でもあるシュエ・マンと踏んでいるようだ。
このマン議長、じつは11月29日に来日して安倍首相を表敬訪問している。
杜父魚文庫
15002 中国、対ミャンマー関係に変化球を用意 宮崎正弘

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