15010 中国にとっての屈辱 古森義久

東アジアでの米中両国海軍のパワー比較です。この比較も歴史をさかのぼることが必要です。
■もはや目の前? 中国海軍が米海軍と肩を並べる日 局地戦ではすでに優位な状況も
1996年3月の台湾の総統選挙に先立って、中国は独立志向の李登輝氏が選挙で勝利することに反感を示し、ミサイル発射などの軍事演習の実施に よって台湾を威圧した。
米国の当時のクリントン政権は中国の軍事威嚇の停止を求めたが、応じなかったため、空母2隻を台湾近海へと急派した。当時の中国軍 はその動きに対してなんの対抗措置も抑止措置も取ることができず、あっさりと台湾周辺での軍事演習を止めてしまった。これは中国にとっては極めて屈辱的な事態だった。
だが当時の中国海軍は米海軍の空母に対してまったくの無力だったのだ。中国海軍の大幅増強はこの事件が契機の一端だったとも言われる。その時期から大規模な海軍力の強化が始まったのだ。
そんな経緯を経て、中国海軍はいまでは堂々たる「遠洋海軍」となった。最近では中国の潜水艦が米軍の空母の至近海域で突如探知され、米側に脅威を与えたり、中国の漁船が米側の音響観測船の調査活動を妨害したり、という事件も起きている。
東アジア海域でそれまで圧倒的な優位を誇ってきた米海軍に、中国海軍が挑戦するような動きが目立ってきたのである。そのクライマックスがこの12月の米海軍イージス艦への中国艦の阻止行動だったとも言えるのだ。
■戦闘能力の質はまだまだ米海軍が上
こうした現状を踏まえ、ワシントンの国際安全保障研究機関「リグネット」が12月下旬、東アジア海域での米中海軍力を比較する分析報告を公表した。日本の海洋安全保障にも直接の影響がある重要な課題である。以下、その要点を紹介しよう。
・中国海軍は現在、空母や潜水艦、小艦艇以外の戦闘用水上艦艇合計75隻を保有している。そのうち45隻がフリゲート艦、22隻が駆逐艦、8隻がコルベット艦で、大多数が実戦配備されているが、そのほとんどは米海軍の水上艦艇の能力より劣っており、伝統的な艦砲を装備しているだけだ。ただし一部には 対艦ミサイルを搭載している。
・だが、中国海軍は長年、続けてきた大幅な近代化をなお進めており、新鋭の駆逐艦やフリゲート艦は敵のレーダーをかわすステルス機能を有し、搭載火砲や対空システムも改善された。新鋭の魚雷や対潜ロケット、対艦巡航ミサイルなども新たに装備されるようになった。
さて、以上のような中国海軍の状況に対し、米国海軍はどうなのか。「リグネット」報告を見よう。(つづく)
杜父魚文庫

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