11月23日は、尖閣諸島から北海道の空まで、よく晴れていた。この日、中国が唐突に「防空識別圏(ADIZ)」を、尖閣諸島のうえまで設定した。
私は対米戦争の3ヶ月の昭和16年9月の御前会議において、昭和天皇が明治天皇の御製「よもの海みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ」を、読みあげられたことを思った。
アメリカはその3日後に、グアム島からB52爆撃機2機をさし向けて、中国が新たに尖閣諸島にかぶせた防空識別圏内を、飛行させた。中国は防空識別圏に無通告で侵入する航空機に対して、戦闘機を発進させるべきなのに、手を拱いて、見過した。
そのまた3日後に、中国は日米の軍用機が防空識別圏を飛んだために、「中国の軍用機が緊急発進し、自衛隊の戦闘機10機と、米軍偵察機2機を確認した」と、発表した。
いつものことだが、中国は虚言症を患っている。
航空自衛隊のF15戦闘機が、今まで10機編隊で飛んだことは、一度もない。この時も、中国機が自衛隊機と米軍機に警告するために、姿を現すことがなかった。
それにしても、ついこの間の平成21(2009)年9月に、鳩山由紀夫首相が訪中して、胡錦濤首席に「東シナ海を『日中友好の海』にしよう」と述べたばかりではないか。今では、創価学会も、公明党も、「日中友好」という言葉を、口にすることがなくなった。習近平首席は、日本における親中派という財産を、壊してしまった。
ワシントンから、著名研究所の親しい友人が、バイデン副大統領が来京する前の週末にやってきた。
私が「バイデン副大統領は東京のあとで、北京へ向うことになっているが、習近平にお礼をいうためだろう」というと、大笑いした。
このところ、オバマ大統領のアメリカの内外における評価が、急降下していた。
オバマ大統領が8月にシリアのアサド政権が市民に対して毒ガス兵器を使ったと断定して、制裁攻撃を加えると発表した。ところが、あらゆる国内の世論調査が、海外の紛争に捲き込まれることに反対したのに怯んで、議会の承認を求めると方向を転換したが、窮地に立った。そこに、ロシアのプチン大統領がシリアの化学兵器を放棄させると、助け舟を出した。藁に縋るようにして切り抜けたために、優柔不断なことを露呈した。
その後、政権の鳴り物入りの目玉である、国民皆医療保険へ向けたオバマケアを開始したが、不備だらけだったために、大きな混乱を招いて、来年11月の中間選挙後まで先送りすることを、強いられた。
オバマ大統領の支持率が、地に堕ちた。大統領は弁舌がたつことで知られてきたが、あと3年も任期が残っているのに、もはや誰も大統領の言葉を信じない。
ところが、オバマ大統領が大きく蹌路(よろ)めいていたところを、今度は中国の習近平主席が救った。中国が尖閣諸島のうえに、防空識別圏をかぶせることを発表したのが、助け舟だった。
オバマ政権はこれに対して、中国を強く非難するかたわら、米軍機を飛行させて、日本の側にはっきりと立った。オバマ大統領は中国のおかげで、内外にまだ筋力があることを、示すことができた。
杜父魚文庫
15014 親中派という財産を失ってしまった習近平 加瀬英明
加瀬英明
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