■「われわれは決して許さない」 活動家ら気勢
国内外の観光客でにぎわう那覇市・国際通り。そのすぐ目と鼻の先にある沖縄県庁前の広場が現在、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に反対する県民らが抗議集会などを開く拠点だ。
「われわれは決して許さない!」
仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事による政府の埋め立て申請承認から一夜明けた28日の抗議集会は、前日から大きく人数を減らした。とはいえ、仲井真氏を「政府の手先」と呼ぶなど激しい批判は続く。
一方、政府は申請承認に大きく安堵(あんど)する半面、仲井真氏が首相官邸で安倍晋三首相らと会談した25日以降の沖縄世論の動きを、なお注視している。抗議集会に参加しているのは一般県民ばかりではなく、本土から来た左翼活動家や、労組なども目立つからだ。
政府高官は「基地負担軽減策が理解されれば、県民は『琉球の王』である知事を潰すことはないのではないか」とつぶやくが、活動家らの扇動次第では不測の事態も起きかねない。
仲井真氏の決断に、賛否が入り交じる複雑な感情を持つ県民に比べ、本土から来た活動家らは「反対一直線」で迷いがない。27日の県庁前の抗議集会は、反対演説や県庁を取り囲む「人間の鎖」などの活動が行われ、メディアでも大きく報じられた。参加者数に関し、主催者関係者は「1900人までは数えた。2千人以上だ」と説明する。集会後は県庁内の1階ロビーで座り込みを断行して気勢を上げた。
■ ■ ■
ただ、ロビーでの反対派の激高をよそに、エレベーターホールでは普通に談笑する市民の姿もあった。
「知事は何で承認してしまったんでしょうね。でも、変な気持ちなんです」抗議集会のシュプレヒコールを横目に広場を通り過ぎた50代女性は、戸惑いながらこう語った。
「米軍基地は国外に出ていってほしいが、普天間の危険を考えれば知事の対応は応援したい」
住宅地に密接する危険な普天間飛行場を早期に移すことの重要性は、県と政府も認識を共有している。にもかかわらず、知事の決断に表立って賛成を表明しにくいのは沖縄独特の事情・空気があるからだ。
「即刻辞職し信を問え」地元紙の琉球新報は28日付で、1面にこんな大型社説を掲げた。反基地一色の言論空間にあって、自民党県連幹部は指摘する。
「本音では基地を容認していても、その主張を口外することは周囲の目もあり簡単でない」
また、来春に沖縄県庁に入庁する内定者の面談で26日に県庁を訪れた23歳の男子学生は、「米軍基地は国外がいいが、悪いことだけでなく必要とされる部分もある」と率直に語る。
雇用や安全保障などの面で、基地が一定の役割を果たしていることは誰でも知っている。経済基盤が弱い沖縄にとって、政府による振興策拡充の意味は重い。
普天間飛行場の移設問題に関する県民意識は、抗議集会に集まった「反対派」と、「賛成派」を2つに分けるだけでは測れない。
27日の県庁前の「人間の鎖」は、メディアや一般市民の目に留まりやすい表通りではつながれていたが、県庁の裏側ではその鎖は途切れていた。(産経)>
杜父魚文庫
コメント