二十年ぶりにNHKの紅白歌合戦を観た。ほかに観るべき番組がなかったからである。
私の気にせいか、あるいはNHKの演出なのか、日本人の心を歌い、故郷(ふるさと)を歌う場面が多かった。
紅白歌合戦を観なくなったのは、老人には理解し難い若い歌手やグループが跳んだり、はねたりするからである。大晦日には一年を振り返るしっとりとした情緒ある歌が望ましい。
第64回紅白歌合戦は、老人にも惹きつける歌が多かった。
<大みそか恒例の「第64回紅白歌合戦」が31日、東京・渋谷のNHKホールで開かれ、「歌がここにある」をテーマに紅白51組の歌手たちが熱唱で一年を締めくくった。
Sexy ZoneやNMB48らアイドル勢から大ベテランの泉谷しげる(65)まで多彩な顔触れが初出場する一方で、最多50回の北島三郎(77)が万感の思いで最後の紅白をつとめあげた。
社会現象になった朝ドラ「あまちゃん」キャストが主役を奪うステージを披露すれば、紅組司会・綾瀬はるか(28)は危なっかしい司会ぶりで耳目を集め、AKB48の大島優子(25)はステージ上で突然卒業を発表、「じぇじぇじぇ」な紅白となった。対戦は白組が優勝した。
◆白組が勝利
「あまちゃん」旋風が紅白を席巻した。オープニングで、能年玲奈(20)が、かすりの着物と「北の海女」の手ぬぐいを頭に巻いたヒロイン「天野アキ」スタイルで登場。アキ率いるビッグバンドがドラマの音楽を担当した大友良英さん書き下ろしオリジナル曲を演奏し、開幕を告げた。
アキは、伍代夏子(52)の歌の後に再び登場。NHKホールと、ドラマの舞台・北三陸(架空の町)の「年越しの宴会をしている袖ヶ浜の人たち」を虚実を超えた中継で結び、北三陸鉄道の駅長(杉本哲太)、副駅長(荒川良々)、海女仲間(渡辺えり)らドラマの面々が姿を見せた。
この異次元中継が、企画コーナー「あまちゃん特別編」へのプロローグ。和田アキ子(63)の歌の後、審査員席の宮藤官九郎が「ドキドキします。大丈夫でしょうか?」と心配する中、スタート。
アキがセンターを務める「GMTスペシャルユニットfeat.アメ横女学園」が、「暦の上ではディセンバー」を熱唱。
歌い終わったアキが、北三陸の親友足立ユイ(橋本愛)に呼び掛けると、ユイは「すぐに行くから待ってて!」と飛び出した。「あまちゃん」テーマ曲と、最終話の続きを意味する「第157回」のタイトルとともにタクシーが疾走するアニメーションが流れ、やがて現実のタクシーの映像に切り替わった。
運転していたのは、タクシー運転手でアキの父を演じた尾美としのり(48)。ドラマでは何度も上京を断念したユイが、ついに東京、それも音楽の最高峰の舞台に立った。
ここからは怒とうの「潮騒のメモリー」リレー。1番を、アキとユイがアイドル歌謡風のアップテンポで、2番を春子(小泉今日子)が切なく歌い、最後に鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が圧巻の高音で、もう一度2番を歌い上げた。
ステージ上には、いつのまにか北三陸にいるはずのあまちゃんキャストが勢ぞろい。あまちゃんファンの嵐の松本潤(30)は「一夜限りの素晴らしいステージでした」と感動。紅白史上例のない大掛かりな余興に、会場もお茶の間も「じぇじぇじぇ」だった。
◆サブちゃんも卒業
前人未到の50回出場、最後の紅白の舞台となった北島は、セットの巨大竜に乗り、万感の思いを込め「まつり」を熱唱した。歌唱後半では、竜から降り立った北島の周りを、後輩の紅白出場歌手全員が囲み、長きにわたって盛り上げてきた“ミスター紅白”の労を涙ながらにねぎらった。歌い終え、北島は「これで北島は紅白を卒業させていただきます!」と感慨深げにあいさつした。
紅組司会・綾瀬が、「主演女優賞」級の活躍を見せた。
◆綾瀬はるか 緊張、号泣、笑顔 主演女優賞の活躍
綾瀬はトップバッター浜崎あゆみ(35)の紹介で、いきなり緊張のせいか言葉につまり、すかさず白組司会の嵐が、「対戦形式ですが、6人で力を合わせて頑張りましょう」とフォロー。先が思いやられたが、持ち前の明るさとマイペースぶりで、少しずつ立ち直った。
最大の見せ場は、前半最後の「花は咲く」コーナー。綾瀬が福島県会津若松市に避難した大熊町の中学生と触れ合うVTRが流れたが、それを見ていた綾瀬が感極まって号泣。言葉が出なくなり、客席から「頑張れ!」と声援が飛んだ。綾瀬は大粒の涙を目にためたまま、思いを込めて丁寧に歌い、最後には満面の笑顔を見せた。(中日スポーツ)>
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