15231 安倍首相の靖国参拝を非難する「傲慢」   古森義久

■安倍叩きを展開したネルソン・・レポート
ケビン・メア元国務省日本部長による靖国参拝問題の論評の続きです。
メア氏は米側で安倍首相の参拝を非難する人たちの態度を「傲慢」と評し、靖国問題はもう忘れろと提言するのです。
■「失望」だけではない米国の靖国参拝への反応 安倍首相批判の論調を元国務省高官が一刀両断
アジアの本当の緊張は中国、北朝鮮が引き起こしている。メア氏はそしてさらに安倍叩きの論調に辛辣に切り込んでいく。
「(安倍首相の参拝への)反対論のほとんどは、『米側のわれわれが参拝するなと告げていたのに、安倍首相が参拝した』ために怒ってしまった、ということのようだ。自分たちの命令に服従しない行動だからけしからんというのだろう。しかしこれはなんと傲慢な態度だろう。傲慢というのは、もちろんワシントンで安倍参拝に憤慨したり失望したと言う人たちの態度を指す」
メア氏は遊就館の戦史の展示にも触れていく。安倍参拝に反対する米側の論客の間では、遊就館の展示が日本の軍事行動を美化したり、正当化していることを反対の主要な理由に挙げる人たちも多いからだ。
「もちろん靖国神社の境内にある施設が、日本の戦争を客観的に見る立場からすれば不当だと言える面もある。特に遊就館の戦史展示が示す認識は、外部の観察者たちにとっては不快なだけでなく、滑稽ですらある。日本は第2次世界大戦では敗北した以外には間違ったことは何もしていないというふうに映る。 だが、すべての戦死者の霊を悼み、不戦を誓い、戦争を反省するための靖国参拝が、遊就館の歴史観を自動的に受け入れているととらえるべきではない」
メア氏はさらに米国側の安倍叩き論者たちに直接的なメッセージを発信する。
「この参拝を憤慨する人たちへの私の提言は『もう忘れなさい』ということだ。この参拝は日本が挑発的とか軍国主義的になることを意味しない。安倍首相が第2次大戦やその以前の時代の歴史を修正しようとしているわけでもない。日本がアジアで緊張を高めているわけでもないのだ」
「アジアの本当の緊張は、東シナ海や南シナ海での中国の軍事拡張や覇権的意図を伴った挑発によって起きているのだ。常軌を逸した国である北朝鮮の軍事挑発も緊張の高まりの原因だ。北朝鮮はまもなく弾道ミサイルに核弾頭を搭載する能力を獲得するだろう」(つづく)
メア氏は日本研究者から弁護士となって、国務省入りした元外交官で国務省の日本部長をも務めた。2011年3月には、沖縄の基地問題に関する沖縄県民への批判的発言などを理由に更迭され、退官した。現在は米国の高速鉄道建設にかかわるコンサルタント企業に勤務している。
そのメア氏の見解を紹介するのは、米国側にも日本の首相の靖国参拝に関して多様な反応があるという現実を日本側に伝えたいからである。この種の見解は朝日新聞などは決して報道しない。
メア氏はまずネルソン・レポートに安倍非難の見解を寄せた人たちの主張を取り上げ、それらへの反論という形で自分の意見を述べていた。
「(この場に安倍非難のコメントを寄せた)ほとんどの人たちは安倍首相自身が参拝について説明した声明を読んでいないようだ。この人たちは安倍首相が靖国神社と同時に鎮霊社をも参拝し、『戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、および諸外国の人々の霊をも悼んだ』ことを無視している。安倍首相はこの声明でさらに『日本は二度と戦争を起こしてはならない。私は過去への痛切な反省の上に立って、そう考えています』と述べているのだ」
「この場(ネルソン・レポート)の論評者たちが完全に無視した、もう1つの極めて重要なポイントは、安倍首相が『ある人たちは、私の靖国参拝が戦犯を崇拝するためだと批判しますが、私が安倍政権の発足した今日この日に参拝したのは、政権1年の歩みと、二度と再び戦争の惨禍に人々が苦しむことのない時代を創るとの決意を英霊にお伝えするためです』と述べていることだ」
「この点はなぜ(この場の議論で)伝えられないのか。たぶん批判者たちにとっては、安倍氏を右翼の軍国主義者だとする決めつけにこの言明は合致しないからだろう。戦争で命を亡くしたすべての人に祈る。過去を反省する。不戦の誓いを新たにする。この種の特徴は極右の軍国主義者ではない。だから批判者たちはその安倍氏の言明を無視するのだろう」
メア氏は安倍首相自身が公式に発表した参拝の説明について、米国側の評者たちがその最重要部分をまったく無視していることを指摘し、その態度は彼らの「安倍は軍国主義者」という決めつけにそぐわないからだと冷静に述べるのだ。(つづく)
米側の日本専門家やその他の学者、ジャーナリストなどの間では確かに反対論が多い。中国共産党と同様に安倍首相を軍国主義者と断じる米国の専門家たちさえ存在する。
そんな安倍叩きを展開したメディアの1つが、ワシントンで民主党系のジャーナリスト、クリス・ネルソン氏が発信するアジア関連専門のオンライン・ニュースレター「ネルソン・レポート」だった。
ネルソン・レポートでは安倍首相の参拝の直後からその行為を非難する意見や投稿が次々に紹介された。
安倍参拝を批判した人たちには、経済戦略研究所所長のクライド・プレストウィッツ氏、国際戦略研究センター(CSIS)研究員のブラッド・グロ サーマン氏、コネチカット大学教授のアレクシス・ダデン氏、外交評議会研究員のシーラ・スミス氏、ハーバード大学名誉教授のエズラ・ボーゲル氏、元米国通 商代表部交渉官のバイロン・シゲル氏などが含まれていた。
こうした人たちは大多数が政治的には民主党系リベラルで、中国の現在の人権弾圧や軍事挑発を批判することは少ない。だが安倍首相が代表する日本の現実主義派、保守派には不思議なほど厳しい論調を浴びせる。特に靖国参拝がからむと声高になる。今回も靖国を参拝した安倍首相の行動を徹底して糾弾し、ダデン氏などは安倍氏を「Thug(悪党、暴漢)」とか「Hooligan(ならず者)」とまでののしっていた。
杜父魚文庫

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