<アメリカは安倍首相の靖国参拝を批判すべきではない、という元国務省高官ケビン・メア氏の意見の紹介を続けます。
■「失望」だけではない米国の靖国参拝への反応 安倍首相批判の論調を元国務省高官が一刀両断
国務省元日本部長ケビン・メア氏はさらに論じていた。
「米側の私たちが焦点を合わせて把握すべきなのは、神社への単なる参拝ではなく、安倍首相が就任からこの1年間に実際に成し遂げたことである。安倍首相は米国の歴代政権が長年の間、期待してきたことを現実に達成しつつある。
日本の防衛費を増額し、平和と安全の維持に重要な役割を果たす日米安全保障条約における米国側の負担を減らしている。安倍首相のリーダーシップの下で、日本はアジア地域の脅威に対してこれまでよりも現実的な認識を抱き、その認識に沿った対応を実際に始めたのである」
■日本メディアが張る「軍国主義」「歴史修正」のレッテル
ちなみにメア氏は民主党のオバマ政権下の国務省で外交官として働いてきた人物である。特に共和党の過激派でもなく、反オバマ陣営で活動してきたという人でもない。米国政府を代表して、日米同盟の運営や日本の米軍基地問題などの実務を扱ってきた経歴の識者なのである。こうした見解は日本側に広く知られてしかるべきだろう。
だが実際には、日本の大手メディアは自分たちが安倍首相の靖国参拝を「軍国主義」「歴史修正」などといったレッテル用語で非難することしか念頭にない。そのレッテルに合わない見解は、米国側の責任ある立場や経歴の識者が述べていても、あたかも存在しないかのような態度を取ってしまうのだろう。
メア氏はこの意見表明で中国に対する論評も述べていた。
「もちろん中国は日本が防衛面でより堅固になることは好まない。なぜなら、より強い日本は東シナ海と南シナ海の全域を制覇しようという中国の野望の妨げとなるからだ。尖閣諸島近くでは、武装艦艇を動員して日本側を威嚇しているのは中国なのである。
最近とくに新たな防空識別圏(ADIZ)を一方的に宣言し、東シナ海の広大な空域をコントロールしようとしているのも中国である。
安倍首相の靖国参拝で失敗した部分があるとすれば、それは中国のヒステリー 増大に弾薬を与え、中国側の手中に陥りかねなくなったことだろう。このヒステリーというのは、『日本が軍国主義化して、アジア地域での緊張を高めている』 という叫びであり、残念ながらワシントンの安倍批判者たちもそれに同調しているのだ」
メア氏の論評は辛辣だが、まったく的を射ていると言えよう。日本側の識者から、もっと強く表明されてもおかしくない客観的な対中国認識である。そもそもこの靖国問題というのは中国が対日外交の戦略カードとして意図的に作り出した産物なのだ。
■日本の防衛費は11年間も削減されてきた
さらにメア氏は念には念を入れるように、安倍叩きの側に痛烈な反論を浴びせていた。(つづく)
杜父魚文庫
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