15351 慰安婦問題 黙っていても嵐は去らない   古森義久

慰安婦問題がなお日本を傷つける形で広がっています。とくにアメリカ各地での慰安婦の像や碑を建てるという運動は勢い増しています。
韓国系の勢力に加え、これまで陰の主役だった中国系勢力が表面に出ています。私自身は「だから警告したのに」という心境です。
昨年6月ごろ、「維新の会」の橋下徹代表が積極果敢な発言をして袋だだきにあうと、もう政界も言論界も、みな黙りこくって、うつむいてしまったのです。とにかくこの問題は黙っているのがベストだという態度でした。
それから半年後、結果をみてください。日本側は黙っていても、いや、黙っているからこそ、嵐はおさまるどころか、広がる一方です。
私の当時の警告をいま改めて紹介します。
<【あめりかノート】ワシントン駐在客員特派員・古森義久>
 ■黙っていても、嵐は去らぬ
慰安婦問題が日本にとってのタブーとなりつつあるようだ。外部からどんな理不尽な虚構の罪を押しつけられ ても一切、反論してはならないという空気が濃くなった感じである。
その背後にはとにかく外部からの攻撃には黙っていれば、いつしか嵐は過ぎ去るという認識 があるようだ。ところがその認識は誤りなのである。
米国でのこの問題をめぐる日本非難の動きを20年近く報道してきた体験では、日本が事実のミスにも反論せず、黙って頭を下げれば下げるほど、不当な糾弾が続くという現実を目撃してきたからだ。
証拠のない日本軍の大量強制連行説を自虐的に受けいれて謝る「河野談話」が1993年に出てすぐ、米国では「慰安婦問題ワシントン連合」という組織が登場し、連邦議会や各大学で宣伝活動を始めた。「日本軍による20万人の性的奴隷」という非難である。
この組織が主体となり、慰安婦だったと主張する中国、韓国の女性15人が2000年にワシントンの連邦地裁に訴えを起こしたことは日本側ではあまり知られていない。日本政府に損害賠償と公式謝罪を求める訴訟だった。
米国では誰でも国際法違反への訴えを起こせるが、相手が主権国家の場合、その案件に「商業性」が含まれることが条件となる。日本の慰安婦問題も商業性が認められたのだから、皮肉だった。
この訴訟は地裁から高裁、そして最高裁にまで持ち込まれ、いずれも完全に却下された。
日本政府の「この種の案件はサンフランシスコ講和条約で補償も謝罪もすんだ」という主張が06年2月の最終判決でも認められた。米国政府も裁判の過程で「講和条約で解決ずみ」とする見解を公式に表明した。
米国側の司法と行政の両方から排された日本攻撃活動は、残る立法府をその舞台に選んだ。連邦議会の下院にマイク・ホンダ議員が慰安婦問題での日本非難の決議案を出したのだ。この決議案も安倍晋三氏が最初に首相になって、慰安婦問題への発言をした結果、出されたような解説が日本側ではなお多いが、事実は異なる。
議会での慰安婦問題提起の陰の主役の「世界抗日戦争史実維護連合会」という在米中国系団体は、ホンダ氏がカリフォルニア州議会議員 だった当時から同氏に政治献金を続けて、日本非難の決議案を1999年に同州議会で採択させた。
ホンダ氏は連邦議員となった2001年からも毎年のように まったく同じ内容の決議案を提出してきた。07年に可決された決議案は4回目の試みだった。
中国政府との絆も強い同連合会も河野談話が出た翌年に結成された。対日講和条約も沖縄の領有権も認めず、明らかに日本をたたき続けることが目的の反日組織である。現在でもニュージャージー州や ニューヨーク州での昨年来の慰安婦記念碑建設をも同会自身の活動の「前進」として宣伝している。
米国での慰安婦問題での日本たたきはこうして日本側が「ぬれぎぬ」を甘受し、最も従順な時期に着実に勢いを増してきたわけだ。黙っていても、嵐は去らないのである。(産経・ワシントン駐在客員特派員)
杜父魚文庫

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