■4千年前の石板に「新説」
西洋史といえばイギリス史もあればフランス史、ドイツ史などもある。共通しているのは欧州文明を理解するうえで旧約聖書を読むことが欠かせない。
日本の伝統文化を理解するうえで古事記や日本書紀、各地に伝わる風土記が必読の書であるのと同じことだ。
正直にいえば神話の世界は読みようによっては荒唐無稽。旧約聖書に登場する「ノアの方舟(箱船)」も”お話の世界”。理屈で割り切ればそうなる。
まず旧約聖書『創世記』にある「ノアの方舟」の要約をみてみよう。
<地上の人間の業に怒りを覚えた神は「神に従う無垢な人」ノアに巨大な箱舟を作らせ、全ての動物の雄、雌一組ずつ箱舟に乗せ、来るべき日に備えた。
洪水により地上の人間の大半が死に絶えたが、箱舟に避難したノアとその一族は無事だった。
洪水から40日後、ノアは水が引いたかどうか調べるため一羽の鳩を放ったとされる。旧約聖書『創世記』によると、
神は地上に増えた人々が悪を行っているのを見て、これを洪水で滅ぼすと「神と共に歩んだ正しい人」であったノア(当時500~600歳)に告げ、ノアに箱舟の建設を命じた。
箱舟はゴフェルの木でつくられ、三階建てで内部に小部屋が多く設けられていた。箱舟の内と外は木のヤニで塗られた。
ノアは箱舟を完成させると、家族とその妻子、すべての動物のつがいを箱舟に乗せた。洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。水は150日の間、地上で勢いを失わなかった。その後、箱舟はアララト山の上にとまった。
40日のあと、ノアは鴉を放ったが、とまるところがなく帰ってきた。さらに鳩を放したが、同じように戻ってきた。7日後、もう一度鳩を放すと、鳩はオリーブの葉をくわえて船に戻ってきた。さらに7日たって鳩を放すと、鳩はもう戻ってこなかった。
ノアは水が引いたことを知り、家族と動物たちと共に箱舟を出た。そこに祭壇を築いて、焼き尽くす献げ物を神に捧げた。
神はこれに対して、ノアとその息子たちを祝福し、ノアとその息子たちと後の子孫たち、そして地上の全ての肉なるものに対し、全ての生きとし生ける物を絶滅させてしまうような大洪水は、決して起こさない事を契約した。神はその契約の証として、空に虹をかけた。>
現代が「神と共に歩んだ正しい人」の末裔ばかりだったら、この世に悪ははびこらないと皮肉の言葉を投げたいところだが、それはまず置いておこう。むしろ現代人を戒める警句として聞いておきたい。
それにしても聖なる山・アララト山を一度はみておきたいと思っていたが、まだ果たせない。アルメニアから観望するアララト山は美しいという。さらには彫りの深いアルメニア女性は世界でもっとも美しいそうな。
そんな思いでCNNが伝えた記事を読んだ。キリスト教とイスラム教は旧約聖書から発した同根の一神教なのだが、古代メソポタミア文明が栄えた現在のイラクで「ノアの箱舟」とそっくりの物語が記された4000年前の石板が発見されたというのが面白い。
<(CNN)古代メソポタミア文明が栄えた現在のイラクで、旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」とそっくりの物語が記された4000年前の石板が発見された。ただ、箱舟の形が大きく異なることから、聖書や考古学研究者らの間で論議が巻き起こっている。
石板は英国の研究者が発見したもので、くさび形文字を解読したところ、神が洪水を起こし、唯一の生存者があらゆる動物を船に乗せたという物語が記されていた。動物はすべて「2匹ずつ」船に乗せたというくだりまで、ノアの箱舟と共通していた。
ところが大きな違いが1つあった。旧約聖書に登場するノアの箱舟は普通の細長い船の形をしていて、船体の全長は船幅の6倍、甲板が3つあって側面から乗船することになっている。
これに対してメソポタミアの箱舟は円形で、縄でできた船体に防水のための塗装が施してある。研究チームはこの記述に沿った模型を作り、実際に水に浮かぶかどうかを調べる予定だという。
古代メソポタミア地域では、これほど巨大ではなかったとしても、実際に円形の船が川で使われていたことが分かっている。
一方、古代の中近東では一般的な舟形の船が描かれている。こうした船は川ではなく地中海を航行していた。
石板や聖書に記された内容は史実ではなく、当時の人たちが自分たちの時代や生活様式を取り入れて、洪水の物語を発展させていたようだ。(CNN)>
■ノアの方舟(ノアのはこぶね、英語: Noah’s Ark)は、旧約聖書の『創世記』(6章-9章)に登場する、大洪水にまつわる、ノアの方舟物語の事。
または、その物語中の主人公ノアとその家族、多種の動物を乗せた方舟自体を指す。「はこぶね」は「方舟」のほか、「箱舟」「箱船」などとも記される。(ウイキペデイア)
杜父魚文庫
15360 ノアの箱舟は円形だった? 古沢襄

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