■アジアがなぜ日本に期待しているのか、その背景にある米国への不信
「オバマ政権の美辞麗句である『ピボット』『リバランス』とは、要するに米軍のアジアからの撤退を意味するのである」(アジアタイムズ、2014年1月30日)。
1950年から53年にかけて米軍は「国連軍」の名のもと、朝鮮戦争に介入し、多大の犠牲を出したが、朝鮮半島南部の共産化を食い止めた。
1960年代から70年代まで、アジアに米軍は80万人もいた。「世界の警察官」を演ずることが米国の使命だと自慢した。
1975年にベトナム戦争に敗北し、爾後、アジアに於ける兵力削減は継続された。
在韓米軍は近い将来に28500人へ削減される。すでに北の火砲の射程以南へ主力基地を移転させている。
沖縄問題をかかえる在日米軍は、沖縄駐留の海兵隊9000名がグアムへ去る。在日米軍もやがて38000名ていどに削減される。だから米国は日本の自衛力強化には理解をしめすばかりか、督促している気配もある。
フィリピンから米軍はピナツボ火山の爆発によってクラーク基地が使えなくなり、ついでスビック湾からも1991年に15000が撤退した。
以後のフィリピン防衛は「必要に応じて米比安全保障条約に基づき派遣される」ことになった。それゆえ、2013年秋にフィリピンを襲った台風被害に米軍は空母を派遣した。
かくして米軍は、オバマ政権が「アジア重視、中国封じ込め」を主張するのを横目に、じつは撤退しているのである。
となれば空隙を埋めて、中国に対抗できる国はひとつしかない。
安倍政権のアジア・シフトは、こうした米軍削減の近未来を見越した上で、しかも米軍ストラテジストが設計した通りの規模とスピードで進捗しているのではないかと分析したのはアジアタイムズに寄稿したピーター・リーである。
「中国のADIZ(防空識別圏)への対応で日米に温度差が生じたように、さらに辺野古移転をめぐる沖縄問題で日米間に緊張が走っているものの、安倍政権の歩みは米軍のデザインに沿っての対応である」(同紙、1月30日)
杜父魚文庫
コメント