15395 米民主党上院議員、中間選挙にらみ一部で大統領離れの動き   古沢襄

今秋の米中間選挙は実質的に始まっているといわれるが、オバマ大統領の支持率低下を受け、民主党上院議員の一部には政権から距離を置く動きが出ている。ロイターが伝えた。
<[ワシントン 31日 ロイター]11月の米中間選挙に向けて厳しい戦いに直面している民主党議員の一部は、オバマ大統領の支持率低下に恐れをなし、選挙戦を始めるにあたって政権から距離を置き、大統領の政策には左右されないと主張している。
民主党が上院で過半数維持する上で議席確保が欠かせないものの、現状では窮地に立つ議員の間で、生き残りを最優先とする戦略が広まっており、12年の選挙でオバマ大統領が敗北を喫した保守色の強い州では大統領の医療、エネルギー、規制などの政策を厳しく批判する候補もいる。
ルイジアナ州選出のマリー・ランドリュー議員、アーカンソー州選出のマーク・プライヤー議員、アラスカ州のマーク・ベイゲッチ議員、さらにはウェストバージニア州のジェイ・ロックフェラー議員の地盤を引き継ごうとしているナタリー・テナント氏などがそうした面々だ。
再選に向けて共和党のビル・カシディー氏と困難な選挙戦となりそうなランドリュー議員は最近、医療保険制度改革(オバマケア)で義務付けられた基準を満たしていなくとも既存の保険契約を継続できる法案を提出。選挙戦の口火を切るにあたり、大統領はすべての国民が希望する保険契約を維持できるとの約束を破ったと批判した。
やはり共和党議員の挑戦を受けるプライヤー議員も銃規制や農業規制の強化を目指すオバマ大統領の政策に反対する考えを表明し、政府がカナダのアルバータ州と米メキシコ湾を結ぶ原油パイプラインの建設の是非について判断を遅らせていると批判。大統領の政策についてはその都度是々非々で態度を決めており、「アラスカ州と米国にとってためにならない政策には今後も反対を続ける」との声明を発表した。
プライヤー議員は改選される民主党上院議員で最も再選が危ぶまれている。共和党議員と接戦のテナント氏も、オバマ政権の石炭政策に批判を浴びせている。
一方、再選で厳しい戦いにある中、オバマ大統領を批判こそしないものの、選挙戦では大統領の同席に消極的な議員もいる。
ノースカロライナ州選出のケイ・ヘーゲン議員は最近、別の約束があるとして大統領と公の場に現れるチャンスを見送った。またベイゲッチ議員やコロラド州選出のマーク・ユダル議員は、選挙戦で大統領と同席するという案に懐疑的な見方を示している。

民主党上院議員はことごとく大統領の政策の一部に安易に同意したとして共和党議員から攻撃を受けており、大統領の支持率の低い州ではことさらその傾向が強い。
先に大統領の一般教書演説に対する反応が鈍いかもしくは冷淡だったことで、民主党議員とホワイトハウスの距離の広がりが露わになった。
ベイゲッチ議員は大統領の演説後、オバマ氏がアラスカ州を訪れても同席で選挙戦を展開することに「興味はない」としながらも、政権の政策によって石油やガスの開発が制限され、計画承認が遅れて、アラスカ州がいかに痛みを被っているかを大統領に見せて回ると述べた。
中間選挙では支持率の低下した大統領への対応に困ることが珍しくない。06年の選挙で共和党議員の多くが、支持率が下がり対イラク戦が不評を買った当時のジョージ・W・ブッシュ大統領から距離を取った。
医療保険制度改革が出足でつまずき、大統領の政策で米国の国際的な影響力が低下したとの批判でオバマ大統領の支持率が下がったことを反映して、今年は民主党が問題に直面している。
ロイターとイプソスによる30日の全米世論調査によると、大統領の仕事ぶりを評価するとの回答は38%、評価しないは53%。1年前には評価するが52%、評価しないが43%だった。
<民主党の懸念>
大統領の支持率低下もあり、民主党は下院での過半数奪回は難しく、上院での過半数を維持できない可能性があると懸念している。
議席数100の上院では共和党が6議席の純増で過半数を奪回するのに対して、民主党は12年の大統領選でオバマ氏がロムニー候補に敗北したアラスカなどの7議席を守る必要がある。これらの州はオバマ大統領の支持率が特に低い。
共和党はオバマ大統領と地元出身の民主党議員のつながり、特に民主党議員が10年の医療保険制度改革法成立を支持した点を有権者にアピールし始めた。
全米共和党上院議員委員会のスポークスマンのブラッド・デースプリング氏は「民主党議員の多くは、いかに距離を置こうとしてもオバマ大統領の政策を負わされ、非常に苦戦するだろう」と予測。
「大統領は民主党が左寄りに大きく方針を転換したことを有権者に思い起こさせ、民主党議員の足を引っ張ることになる」と語った。(ロイター)>
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