<2016年の米大統領選の民主党有力候補と目されているヒラリー・クリントン前国務長官の選挙運動の母体となる強力な政治資金団体の活動が、党内に波紋を呼んでいる。
同団体が民主党の大統領候補指名争いを席巻するだけでなく、今秋の中間選挙の民主党候補者への献金も吸い取ってしまうのではないかとの不安が生まれている。
不安の対象となっているのは、クリントン氏を支持するスーパーPACと呼ばれる特別政治活動委員会「プライオリティーズUSA」。候補者とつながりのある普通のPACでは政治献金に制限があるが、候補者とは直接関係のないスーパーPACは献金を無制限に集められる。
このためプライオリティーズ幹部は献金者に対し、中間選挙後に献金の多くを支払うよう要請することを検討している。
例えば、大統領選までに総額100万ドル(約1億0100万円)の献金を約束した場合、中間選挙前には10万ドルだけ支払うよう求められる可能性がある。同団体の関係者は、「議会選挙の候補者が、献金者から『すべてプライオリティーズに献金したのでもうお金が出せない』と言われることがないようにしたい」と述べる。
今月、民主党寄りの有権者を対象に実施された世論調査では16年の大統領選でクリントン氏が圧倒的な支持を得ている。
また大統領選の予備選で、クリントン氏が労せずして民主党候補指名を獲得するようなことになれば、政府の個人情報監視や自由貿易協定、イランの核開発など党を二分する問題での論戦の場が失われると懸念する向きもある。
サウスカロライナ州民主党支部の元支部長のディック・ハープートリアン氏は、「予備選では活発で激しい論戦が行われる必要がある。それは、さまざまな問題で候補者の立場が明確になるからだけでなく、大統領選の本選に向けての準備になるからだ」と述べる。
ハープートリアン氏は、1カ月ほど前にホワイトハウスを訪れ次期大統領選で民主党のもう1人の有力候補とみられているバイデン副大統領と会い、大統領選への出馬を決めれば支持すると伝えたことを明らかにした。バイデン氏は、まだ決めていないと応えたという。
民主党員の中では、クリントン氏が早々と本命候補となるのは好ましいことではないと考える向きもある。同氏は2008年の大統領選でも早々と最有力候補とみなされたが、有権者の反応はさめたものだった。
過去2回の大統領選でオバマ大統領の選挙活動に参加したベン・ラボルト氏は、「08年の大統領選でのクリントン氏の最大の弱点は、早々に本命視されたことだった。16年に予備選が低調になれば、状況はもっと悪くなるかもしれない」と語る。
クリントン氏は、大統領選に立候補するかどうかはまだ決めていないとし、年内に決めるつもりはないと述べている。そうしたなかで、12年の大統領選でオバマ・バイデン陣営の選挙戦を総括したジム・メッシナ氏が、プライオリティーズの共同委員長に就任することになった。
関係者によると、バイデン氏は彼が大統領選に出馬するかどうか結論を出す前に、メッシナ氏が親クリントンの陣営に参加すると決めたことに感情を害しているという。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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