15485 ケネディ駐日米大使、沖縄訪問で慎重な外交姿勢   古沢襄

【那覇】11日から3日間の日程で沖縄を訪問しているキャロライン・ケネディ駐日米大使は、日米同盟において最もセンシティブな問題の1つを刺激しないように慎重に行動しているようだ。沖縄では、多くの住民が長年にわたり米軍基地の県内移設計画に反対している。
故ジョン・F・ケネディ元大統領の娘であるケネディ氏が沖縄を訪問するのは大使就任後初めて。大使は12日、東アジアにおける米軍の主要拠点であり、在日米軍のおよそ70%が集中する沖縄県との関係改善に努力を傾けた。
ケネディ大使は沖縄県の仲井真弘多知事と会談。仲井真知事は昨年12月、人口密度の高い沖縄中心部にある米海兵隊の普天間飛行場の移設に向けて、同県名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認したことを表明し、県民の反発を呼んだ人物だ。
安倍政権は、強硬姿勢を強める中国に対抗するために米国との安全保障面での強化を図っており、その一環として基地移設計画を推進している。
ところが、移設先に選ばれている名護市では3週間前の市長選挙で、移設計画に反対する稲嶺進市長が再選を果たした。稲嶺氏は埋め立てに関連するいかなる申請もすべて断る意向を明確に示しており、18年間にわたって停滞していた移設計画に再びブレーキがかかる可能性もある。
そうした中、ケネディ大使と仲井真知事は20分間の会談で主に文化や教育面での交流を深める重要性を話し合い、基地問題について多くは語られなかった。大使は「米軍駐留の負担軽減に向けて協力する」ことが重要だと述べたが、普天間基地の移設計画には言及しなかった。
また、大使は名護市の稲嶺市長を含む市町村や経済界の関係者を招いた総領事館主催のレセプションでも沖縄の負担軽減に向けて尽力するとの考えを繰り返し、「迅速に実現を図るべく、米国は皆さんや日本政府と連携していく」と述べた。
ケネディ大使はこれに先立ち、沖縄県糸満市の平和祈念公園を訪れた。第二次世界大戦末期の沖縄戦で亡くなった人々の遺骨が納められた国立沖縄戦没者墓苑で献花したほか、仲井真知事との会談後には県内の高校も訪問した。沖縄訪問最終日となる13日は、辺野古を視察する可能性がある。
ケネディ大使は、その政治的血筋から、日本でスーパースターのような扱いを受けている。沖縄県民の多くは、大使が基地問題に関する懸念に聞く耳を傾けてくれると期待し、訪問に大きな関心を寄せていた。11日には何百人もの移設反対派が那覇市で抗議デモを行ったほか、沖縄の地元紙2紙は珍しく英語の社説を掲載し、ケネディ大使に普天間基地の県内移設計画を見直すよう強く要請した。
普天間基地周辺の住民は、長年にわたって騒音や事件事故の恐怖を訴えており、基地の閉鎖または県外への移転を求めている。また、基地の多くが集中する沖縄の県民は米軍を日本に駐留させるにあたって過剰な負担を強いられていると考えている。
普天間基地がある宜野湾市の住民、安田邦登さん(67)は、深刻な騒音被害を引き起こしている米軍施設は閉鎖または県外に移設されるべきだと主張する。そして、「普天間は米国自身が規定する安全基準にも違反しており、閉鎖される必要があるが、辺野古に移設すれば沖縄にまた新たな基地が作られることになるだけだ」、と話した。
しかし、地元住民の強い反対にもかかわらず、安倍首相は1996年に合意された普天間移設計画の遂行を推進している。普天間移設を求める声が高まったのは、95年に12歳の少女が米兵3人に集団暴行される事件が発生したことが発端だった。
さらに、安倍首相の昨年12月の靖国神社参拝に対し、日本とアジア諸国との関係悪化を懸念する米国が異例の批判をしたことで、首相の普天間移設の取り組みは新たな重要性を持った。
ケネディ大使自身も1月にインタビューで安倍首相の靖国参拝を批判し、日本政府に対してこれまで以上に近隣諸国との緊張緩和に努めるよう求めた。
また、大使は最近、和歌山県太地町で行われているイルカ追い込み漁を批判する見解をツイッターで発信して物議を醸した。沖縄県の地元紙、琉球新報と沖縄タイムスはこれに反論し、11日の社説で基地移設予定地の辺野古沿岸が絶滅危惧種ジュゴンの生息域であることを考慮するよう要請した。
琉球新報は「イルカ追い込み漁の非人道性について深く懸念されていると言うのでしたら、ジュゴンの餌場を破壊して生息地を脅かすことは非人道的ではないでしょうか」と問いかけた。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
杜父魚文庫
  

コメント

タイトルとURLをコピーしました