15527 書評『2014年の米中を読む』   宮崎正弘

■曖昧戦略から弱腰外交のオバマは中国に適切な対応を欠いている。そうはいっても習近平は最弱の皇帝、華国鋒に酷似する権力状況。
<古森義久 vs 矢板明夫『2014年の米中を読む』(海竜社)>
「米国と中国を知らなければ世界はわからない」というのが副題だが、まさにその通りである。
中国通の矢板明夫氏は産経新聞北京特派員。すでに北京駐在七年のベテラン。かたや古森義久氏はワシントンが長いが、北京駐在歴の二年、中国事情にも詳しい。 
このふたりが米国と中国、それも米国の中国研究の視座から情勢を分析するところがユニークである。
冒頭から衝撃的な中国の内部事情が突出する。
太子党エリートの習近平はコンプレックスの塊で、文革の再来を夢見て、『中国の夢』というアナクロ的なショービニズムを推進し、毛沢東の猿まねを演じている。
軍事委員会主席、安全保障局主任など重責をいくつも兼ねるのは「それだけ自信のなさの裏返し」であり、その点で華国鋒と酷似している。
思想締め付けを強化していることは報道でも知っていたが、この文脈から朱建榮の失脚がからまると推測する矢板氏は、テレビで江沢民の代理人のような発言をして日本での宣伝工作の先兵だった朱教授が、中国でもテレビで喋ったが、日本の考え方も同時に付け加えた。習近平に思想締め付け路線は、それさえ許さなくなったため拘束されたと矢板氏がいうのだ。
また日中関係冷却化に危機感をもった野中広務が急遽訪中したが、過去三十回も会談した曾慶紅は現れず、替ってでてきた唐家センは日本語を意図的に使わず、中国語で言い分を読み上げただけだったとか。
野中は「かなりの圧力の元で(彼らが)仕事をしているなと実感した」と感想を矢板氏に語ったようである。

李克強は習近平とのレースに土壇場で敗れたが、その理由は海外亡命組から李に期待するというエールがネットで送られ、それが北戴河会議直前にネットで表明されたため、江沢民が逆転を主導した。しかし、コンプレックスの塊、指導力のない習近平は、いずれ華国鋒のような運命をたどる可能性があると示唆する。
他方、古森氏は米国内の中国論、とくにシンクタンクや議会筋の中国分析の変化、国家安全保障論議のなかで、中国軍をいかに位置づけているかを平明に解説する。
とりわけ中国人の留学生が急増し、彼らが中国の主張を繰り返している実態は日本にとっての脅威となっている今日的政治状況は憂うべきことだとされる。
オバマの中途半端な中国政策、そのリバランスというのは、ふたを開けたら「アメリカの衰退だった」(エコノミスト、2月15日号)。一方でアメリカ系企業はどっと中国から撤退しているが、ワシントンでは親中派政治家も増えている。
最後の日本のあり方を問うに、『朝日新聞と反対のことをやれば、日本は良くなる』という結論的提案には賛成である。
杜父魚文庫
  

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