15572 王岐山「腐敗摘発チーム」、次の大物標的は曾慶紅   宮崎正弘

■北京市公安局、上海派残党の妨害にめげず、500名規模の捜査陣を投入
香港誌『開放』(2014年2月号)によれば、習近平政権がすすめる反腐敗キャンペーンの次の目標は周永康ら『石油派』の裏側に見え隠れする大物中の大物、曾慶紅であると分析した。
「打大虎、打老虎」の標語は「大虎」が周永康ら石油派。『老虎』がその黒幕であり江沢民の右腕、「謀臣」といわれた曾慶紅(元国家副主席)というわけだ。
捜査チームは二つに分かれ、「一号チーム」は主に温家宝前首相の夫人と息子の汚職に的が絞られており、NYタイムズが報じたように、彼らのダミー会社、関連起業やカリブ海のタックスヘブンを通じて海外から投資された資産、隠し財産などの詳細な証拠を収集していると伝えられている。
「二号チーム」は周永康ら石油幇が対象だが、隠れた捜査目的は曾慶紅とその実弟、息子らの海外における投機、投資、香港のダミー会社、スイスの銀行など慎重な証拠集めがなされているという。
そんなことありか?
そもそも習近平を福建省省長から浙江省党書記に抜擢し、参階級特進で政治局入りから党の総書記に引き上げ、さらに国家主席のポストにも就かせて、団派の李克強をおしのけた辣腕は、表向き江沢民、本当は軍師の曾慶紅であり、習近平にとっては最大の恩人だ。したがって捜査対象にさえなりえず、習近平が手を出すはずがないと考えられた。
異変は昨年の習仲勲生誕百年行事だった。
習近平の父親、習仲勲は革命元勲の大物、党幹部はほぼ全員が出席するのが恒例なのに、欠席がふたりいた。薄煕来と曾慶紅である。薄はすでに失脚しており、欠席するのは当然だが、なぜ曾が欠席したのか揣摩憶測が飛んだ。
『開放』誌が北京筋から得た情報は、この異変によって、「第一号チーム」は温家宝前首相が対象ではなく、じつは曾慶紅の調査が真の目的ではないかという推測が浮上してきたのである。 
というのも曾は国家副主席になる前に中央弁公室主任(主席補佐官)、組織部長をつとめて党の人事権を握り、人脈を増やした経歴があり、その過程で胡錦涛や温家宝などを幹部に引き上げる一方で、周永康ら四川省閥の石油派と強い関係を築いたからだ。
▼曾の息子や姪や弟らの「仕事」
 
曾の息子、曾偉は山東省の電力企業「魯能集団」(国有)を梃子にして、すでに700億元(邦貨換算1兆2000億円前後)もの財産をちょろまかしたという。中国語の『鯨呑』という表現は、この巨大国有企業をあんぐりと私物化した意味である。
魯能集団は発電企業が本体だが、石炭、精錬などいくつかの別会社、子会社を経営し、山東省の大型企業への電力供給で純利益も高いとされた。05年、この集団の経営、とくに会計の不透明にメスが入り、「これはやばい」と本能的に悟った曾偉は07年に急遽、オーストラリアへ逃げた。
 
ここで新しい疑惑が登場する。
曾偉は「豪不動産史上で参番目の巨大取引」を言われる豪邸をシドニーに購入した。その不動産か価格は3240万豪ドル(31億円弱)。そのうえで500万豪ドルをかけてインテリア、内装、家具を整えた。
曾慶紅の姪である曾寶寶(兄弟曾慶准の長女、38歳)は香港で大陸不動産を販売する「花様」を経営しているが、これを香港株式市場へ上場し、持ち株分だけでも70億8000万香港ドル(邦貨換算900億円)、香港で第二十位の財閥に浮上した。
曾慶准は香港で表向きの肩書きは駐在文化部長だが、香港でビジネスを一手に握り、また国民的歌手の宋祖英を江沢民に紹介したこともあるというと『開放』が分析している。
杜父魚文庫
  

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