15624 米ロはお互いの手の内をみながら突っ張り合い  古沢襄

ウクライナ問題をめぐって米国とロシアが、米ソ冷戦時代に戻りかねないという極論が出ています。だが、ちょっと待ってほしい。国際政治、軍事の面で情勢を斬るのではなくて、もっとグローバルな経済の側面で、この問題を考察する必要があります。
米国もロシアも局地的な戦争になる事態を決して望んではいない。結局はお互いに軍事力を誇示しながら妥協の道を模索しているのが本音でしょう。
オバマ政権はシリア問題でロシアにしてやられた後遺症がありますから、ウクライナ問題で下手な妥協はできない。一方、プーチン・ロシアはロシア産天然ガスの主要輸出先である欧州を失う高飛車な強圧外交には出れない・・とみるべきです。
ウクライナに対して圧力を掛ける目的でパイプラインを通じたガス供給を停止するといっても、このパイプラインはドイツなどEU各国にも通じていますから長期の停止措置はロシアにとっても経済的な打撃になりかねない。
さりとてプーチン大統領が目論むシベリア産の天然ガス・原油のアジア・太平洋パイプラインはまだ本格稼働していない。いまは中国向けのパイプラインが稼働しているだけです。欧州向け天然ガス輸出にとって代わる域には達していません。
長期的にみればロシアはアジア・太平洋地域に活路を見いだす政策転換が必要ですから、日本にとっては価格交渉で優位に立てる筈です。それはまた中東地域に偏在している日本のエネルギー資源の多角化にとって必要なことになります。
ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を事実上掌握するなか、ロシア国営のエネルギー会社ガスプロムはウクライナ向け天然ガス価格の割引をやめる方針を発表しています。さらにウクライナに対してガス供給を停止するまでエスカレートするのか、まだ不透明です。
本来なら米国はロシアの強硬措置に対応するためにウクライナに米国産LNG(液化天然ガス)の輸出拡大を図る必要がありますが、肝心のウクライナにはLNGを受け入れるターミナルがありません。それの建設、設備を整えるのが先決ですが、まだ時間がかかるでしょう。
米国もロシアもお互いの手の内をみながら、突っ張り合いをしているのが現状です。ただオバマ政権はこんどばかりは、シリアでみせた様な優柔不断外交はとれない筈です。秋の中間選挙を控えて安易な妥協をすれば、オバマ外交の終えんを迎えかねません。
ロイターは共和党の次期大統領候補の1人と目されるマルコ・ルビオ上院議員が「オバマ氏が断固とした行動をとらなければ、プーチンのような暴君とは渡り合えない」と真っ正面から痛烈な批判をしたと伝えています。
杜父魚文庫

コメント

  1. 読者 より:

    演説だけが上手いマイホームパパのオバマ大統領には無理だろう。
    それにしても、まだまだ任期が残っている。
    憂鬱なことだ。

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