■ウクライナ首相が訪米、対応策で協議
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ウクライナの混乱はクリミアから東部の主要工業都市ドネツクやルハンシクに波及しようとしている。
ウクライナのヤツェニュク首相はロシア系住民が多数を占めるウクライナ東部地域では「非常に難しい」状況が続いていると認めつつ、親ロシア派のデモがウクライナ新政権の統治を脅かすには至っていないと語った。
ヤツェニュク首相は12日、ワシントンを訪問してオバマ米大統領と会談。ロシア軍がクリミアに入ったのが確実視されていることから、対応策を協議するものと思われる。
<【キエフ】ウクライナのヤツェニュク首相は10日、ロシア当局がウクライナ東部の騒乱に油を注いでいると非難した。一方で、ウクライナ当局は東部の主要工業都市ドネツクを引き続き掌握し、週末に親ロシア派のデモで緊張が高まったルハンシクの支配も奪回したと発表した。
ヤツェニュク首相は、ロシア系住民が多数を占めるウクライナ東部地域では「非常に難しい」状況が続いていると認めつつ、親ロシア派のデモがウクライナ新政権の統治を脅かすには至っていないと語った。
東部地域の親ロ集会は過去2週間にわたって続き、一部は政府庁舎に乱入、庁舎屋上のウクライナ国旗を引きずり下ろしロシア国旗を掲げるなどの事態に発展していた。
親ロ派のデモ隊は9日、ルハンシクの政府庁舎を占拠し、中央政府が指名した新市長を辞任に追い込んだ。
ドネツクでは、政党「ウダル(一撃)」党首のビタリー・クリチコ氏が集会を予定していたが、数千人に上る親ロ派が中央政府支持派と小競り合いを起こしたことから、集会は急きょ中止を余儀なくされた。プロボクサーから政治家に転向したクリチコ氏は、5月の大統領選への出馬を計画している。
ヤツェニュク首相は10日、何千人というロシアの工作員をウクライナ当局が取り押さえ、国内で何らかの行動を起こすのを阻止したと明らかにした。
さらにロシアはウクライナのクリミア自治共和国に軍隊を送り込み、欧州の地図を塗り替えようとしていると主張、ウクライナからの分離を問うクリミアの住民投票をやめさせるよう求めた。
「ロシアには、クリミアの住民投票の中止を要請する。クリミアはウクライナ領にとどまる。クリミア政府は、1万8000人のロシア軍兵士の後ろ盾を受けた犯罪者集団に乗っ取られた」と語った。
ヤツェニュク首相は、クリミアの自治権拡大を問う国民投票を実施する用意はあるが、「ロシアに機関銃を突きつけられた状態では、(国民投票を)行うことはない」と述べた。
最近誕生したクリミア政府については、中央政府系金融機関の運営を妨げていると非難を繰り返した。クリミア政府は先にロシアルーブルを法定通貨として導入すると発表しており、それに続き「(ウクライナ)国立銀行(中央銀行)および財務省の口座を封鎖した」と言う。
「国立銀行および財務省の(クリミアにおける)機能回復に向け、できる限りのことを行っている」と述べた。
ウクライナで財務省と中銀の口座は、年金給付金の支払いや社会政策の資金提供に利用されている。一方のクリミア当局は9日、クリミアでこれら機関の機能を阻止しているのは中央政府だとしていた。
ヤツェニュク首相はこのほか、クリミアに駐屯するウクライナ軍には1億2500万フリブナ(約13兆7000億円)の一時金支払いが約束されていると語り、「民間銀行」を介して11日から支払いが行われる見通しを示した。
同首相は12日、ワシントンを訪問してオバマ米大統領と会談する。13日には国連本部で演説する予定だ。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
■米大統領とウクライナ首相が会談、住民投票控え緊迫
<(CNN)オバマ米大統領とウクライナ暫定政府のヤツェニュク首相が12日、米ホワイトハウスで会談した。オバマ大統領は、ロシアがクリミア半島から部隊を撤収させなければ代償を負うことになると警告。ヤツェニュク首相は「決して屈しない」としながらも、ロシアとの友好関係も保ちたい意向を示した。
オバマ大統領は記者団に、「ロシアが今のまま進み続けるのなら、我々だけでなく国際社会が、ロシアの国際法違反に対して代償を負わせざるを得なくなる。(ロシアの)プーチン大統領が別の道を取ることを望む」と語った。
ヤツェニュク首相は「我々は主権をかけて戦っており、決して屈することはない」と強調。ウクライナは「現在も今後も西側諸国の一部」だと言明する一方で、「ロシアの良き友人であり、パートナー」であることは変わらないと付け加えた。
ヤツェニュク首相はワシントンで開かれた外交政策シンクタンク、アトランティック・カウンシルの会合でも、「我々は今でもロシアとの自由で対等な関係を望んでいる。しかし軍事侵攻下ではそれができない。軍事的選択がこの危機を打開するための最善の選択肢だとは思えない」と指摘した。
ヤツェニュク首相はオバマ大統領との会談に先立ち、米国務省のケリー長官とも会談。13日にはニューヨークを訪れ、国連安全保障理事会で演説する。
ウクライナの代表団は米議会や世界銀行、国際通貨基金(IMF)とも協議を行い、ウクライナに対する支援を要請する。
クリミア半島は実質的に、武力によってウクライナから切り離された状態にある。
12日にはクリミア半島西部にあるウクライナ軍の基地で、基地に近づいてゲートに機関銃を置いたロシア兵と思われる部隊に対してウクライナ軍が銃撃。ロシアの部隊は撤退した。
ロシア編入の是非を問う住民投票を16日に控えて、首都キエフやトルコのイスタンブールなど各都市からクリミア半島への便は今週いっぱい欠航となった。現在はモスクワからの便だけが到着している。
主要7カ国(G7)は声明を発表し、ロシアに対して「ウクライナの法律と国際法に反してクリミア半島の現状を変えさせようとする行動をすべてやめる」よう迫った。
住民投票を支持する行動も即時中止を求め、「住民投票が実施されたとしても法的効力はない」「我々は結果を承認しない」と強調。もしロシアがクリミア半島を併合した場合には、「さらなる措置を講じる」と警告している。(CNN)>
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