15679 クリミヤで中国は仲介積極的、インドは中立   古澤襄

■プーチン・ロシアが欧米との”くさび”狙う2カ国
ロシアのプーチン大統領はウクライナ南部クリミア自治共和国の併合を宣言した18日の演説で、中国指導者による「歴史的、政治的背景への考慮」を評価し、インドの「自制」とあわせて謝意を表明した。対露制裁を強める米欧との間にくさびを打ち込む狙いがあるとみられ、中印両国の今後の動きが注目される。
【北京=矢板明夫】中国外務省の洪磊報道官は19日の定例会見で、ロシアがクリミア自治共和国の併合を決めたことについて、「中国は一貫して各国の主権と領土保全を尊重する。法律と秩序の枠組みのなかで、政治的に解決すべきだ」と述べた。その上で、「各国は冷静さを保ち、対立を激化させる行動は避けるべきだ」とし、対露制裁を実施した欧米諸国を暗に批判した。
中国政府はこれまで、クリミア問題に関して曖昧な立場をとってきた。国内に独立を求めるチベット、ウイグル問題を抱え、「独立」を決めたクリミアのやり方を支持できない事情があるからだ。
習近平国家主席は22日から欧州4カ国を歴訪し、オランダ・ハーグでの核安全保障サミットにも出席する。中国の中立的な立場を生かし、各国指導者との会談でクリミア問題の仲介役を積極的に演じることを通じて、中国の影響力を高める思惑もあるとみられる。
中国政府の曖昧な態度に対し、共産党機関紙、人民日報傘下の環球時報は19日付の1面トップに「クリミア、家に帰ってきた」と題するロシア寄りの長文記事を掲載。元駐露武官、王海運少将の「ロシア支持は国際正義への支持だ」という趣旨の寄稿も載せた。
中国政府系シンクタンクのロシア専門家は「中露は外交交渉をしているはずだ。プーチン氏が釣魚島(尖閣諸島の中国名)で中国を支持すれば、中国もクリミア問題でロシアを支持すると表明するだろう」と話している。
【ニューデリー=岩田智雄】ロシアのプーチン大統領は18日、インドのシン首相に電話し、クリミア自治共和国の併合決定について説明した。インド外務省によると、シン首相は、ウクライナ情勢の現状を説明したプーチン氏に謝意を伝えるとともに、「すべての当事者の抑制した行動と建設的な協力」を促すことでインドの中立的立場を伝えた。
シン氏はプーチン氏に「国家の統合と領土保全の問題でのインドの一貫した立場を強調した」という。また、「この地域でのすべての国家の正当な利益を守る政治的かつ外交的な解決策を見いだす」ことへの希望も表明。24、25両日にオランダ・ハーグで開かれる核安全保障サミットでも、クルシード外相が同様の立場を示すとみられる。
独立後、社会主義的な経済政策を取ったインドは、旧ソ連から軍事、経済支援を受けた。世界最大の武器輸入国インドにとり、ロシアは現在も最大の武器供給国だ。インドは米欧が打ち出した対露制裁への参加も表明しておらず、シン氏とプーチン氏は電話で、両国の戦略的パートナーシップの重要性を再確認した。
全方位外交を基本とするインドは、ロシアとともに新興5カ国(BRICS)の一角として連携している。19日付のインド紙ヒンドゥスタン・タイムズの社説は「インドの伝統的な姿勢は、他国の関係に不干渉であることだ。強固な関係にあるロシアの事案では特にそうだ」と指摘した。(産経)>
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました