15687 日朝接近に朴槿恵政権は神経ピリピリ    古澤襄

■「安倍首相の電撃訪朝」を本気で心配する韓国
北朝鮮の金正恩政権による対日接近の本格化に韓国が神経質になっている。北朝鮮の狙いは、孤立してしまった国際評価の転換や人道支援への期待などだが、韓国にとって日朝関係が南北関係より進展すると、統一問題を最優先政策にしている朴槿恵大統領のメンツにかかわる大問題なのだ。2002年の小泉訪朝時がそうだったのだが、北朝鮮は孤立すると対日接近してくる。というわけで、気の早い韓国からは「安倍晋三首相も電撃訪朝?」などと心配する声までささやかれている。(久保田るり子)
■金正恩政権、拉致問題はどこまで本気? 
日朝政府間協議が1年4カ月ぶりに4月にも再開することが決まった。「対話を求める北朝鮮の態度は予想以上だ」
今月上旬から始まった非公式協議で日本側は手堅い感触を強めている。“本気度”のひとつの根拠になっているのは、北朝鮮側の交渉陣に国家安全保衛部(秘密警察)幹部が出てきたことにある。
北朝鮮に留められている日本人拉致被害者の管理の実態は長い間不明だったが、ここ数年、「拉致被害者は居住地が移され、2008年ごろから国家安全保衛部の管理下にある」との有力情報もあり、首脳部に直結する保衛部が日本人拉致問題を主導していることがはっきりしてきた。
拉致が動いた小泉訪朝も、日朝水面下交渉で北朝鮮を代表したのは「ミスターX」と呼ばれた柳(リュ)京(ギョン)・国家安全保衛部副部長だった。
横田めぐみさんの娘、ウンギョンさんと横田滋、早紀江さんの面会についての日朝の事前協議は約2カ月前から行われていた。それに加えて日本人遺骨返還に関する赤十字会談について、北朝鮮側が2月後半に協議の提案を行ってきた。こうした動きで日本側には「北朝鮮は本気で動きだそうとしている」との認識が生まれたという。
局長級で再開する政府間朝協議で日本側は、2008年に合意した再調査に立ち返って被害者の安否情報の確認作業の要求からスタートさせる考えだ。
■北朝鮮の狙い、本丸は遺骨ビジネス?
とはいえ、北朝鮮側の“本気度”については、いまのところ懐疑的な声の方が優勢である。「戦術的な見かけ倒し」というのだ。北朝鮮の狙う“本丸”はあくまで日本人遺骨収集ビジネスで、この事業に日本政府を取り込み、ジャパンマネー獲得をもくろんでいるとの見方だ。
北朝鮮地域には終戦前後に同地域で死亡した日本人の遺骨約2万柱がまだ残っており、所在地もはっきりしていない。遺骨収集は人道問題であるため、日本政府は遺族らの渡航自粛措置を緩め、2012年8月から墓参と遺骨収集が民間レベルで始まった。
北朝鮮はこの「事業」に日本政府の正式参加を要求。今回の協議では日本政府による遺骨収集開始ついて協議が始まっている。
前回の赤十字協議で北朝鮮側は「遺骨の埋葬地の一部が都市開発の対象地域になっている」などと述べた。これは北朝鮮側が日本にインフラ整備などで資金提供を求めていることを示している。
北朝鮮は日朝協議で日本人拉致問題について、「すべて解決済み」との立場を変えて再調査などに誠意を持って答える準備があるのか。専門家の間では「拉致事件は体制の根幹にかかわる問題で、金正恩体制下での政策転換は困難」との見方が支配的で先行きは依然、不透明である。
■南北、日朝接近の本当の背景は中朝関係改善?
「金正恩氏の訪中要請に中国は応じていない。張成沢氏粛清で中国の態度はますます硬化した。最近の南北関係改善や対日接近は、対話路線への転換で孤立を回避し、中朝関係の緊張緩和をはかろうとの局面転換が最大の背景だ」(前出の専門家)
中朝国境情勢に詳しい関係者によると、張成沢処刑以後、中朝関係は急速に悪化し北朝鮮側に打撃を与えている。中国から北朝鮮に入る物資のうち、一部の生活物資や軍の戦略物資が突然、禁輸になるなど、中国は恣意(しい)的に北朝鮮に圧力をかけて中朝関係の窓口だった張氏粛清に対する「懲罰と警告」のシグナルを金正恩氏に送っているという。
中国は、核保有する金正恩体制の強権体質に不信感を募らせている。2月下旬には劉振民外務次官が、3月17日からは武大偉朝鮮半島問題特別代表が訪朝して6カ国協議再開を求めた。一方の北朝鮮は、米朝関係が最悪なうえ中朝関係も極度に冷えこんで、これ以上の国際的な孤立への危機感から対話に舵を切ったというワケだ。
日朝の行方を最も注視しているのは韓国の朴槿恵政権だ。日韓のパイプを詰まらせたのは朴槿恵政権だが、24日からの核安全保障サミットでは日米韓首脳会談に応じると姿勢を転じた。いま、朴大統領は日韓連携の重要性を再認識しているのかもしれない。朴大統領が安倍首相に一番聞きたいのは、慰安婦問題より日朝関係の見通しだろう。(産経)>
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