ウクライナの政変に続く米ロの対立激化の経過を子細にみると、シリア内戦で反政府勢力を支援した欧米が、アサド政権を陰に陽に支えたロシアとの対立図式が浮かびあがる。軍事力を背景にしたロシアにオバマ米政権は屈辱的な敗北を余儀なくされた。
失地回復を目指した米国はウクライナの親EU勢力を支援し、ソチ五輪に気をとらえていたロシアの隙をみて親ロシア政権を転覆させる政変を主導した。シリアの仇をウクライナ政変によって得たとみるべきだろう。
戦争なき米ロの対立で米国は五分五分の勝利を収めた高揚感に包まれた。ロシアがクリミアに侵攻するとは読んでいなかったのであろう。
このことをさらにみると、アラブの春は民主化路線を推した欧米の後押しがあったのは疑う余地がない。その結果はむしろイスラム勢力の伸張を許した。さらにイスラム過激派が力を得て、むしろ混迷の坩堝と化している。だがアラブにおけるロシアの影響力は確実に後退している。
その延長線でウクライナ情勢をみておく必要がある。事は明らかに米ロの力較べの様相を帯びている。とはいえオバマ政権は軍事力・戦争によってロシアを屈服させることは考えていない。欧米が一致してロシアに経済制裁を課すことによってロシアの野望を挫く路線をとっている。
しかし、この経済制裁も中国やインドは加わろうとしない。ロシアの天然ガスに依存するドイツなど欧州各国も制裁の仕方には濃淡がある。北方領土の返還交渉を進めようとしている日本も過度にロシアを刺激する制裁には及び腰というのが本音であろう。
とどのつまりは経済制裁も名ばかりに終わる可能性が強い。クリミアを手中にしたロシアがウクライナ東部や南部に侵攻しないかぎりウクライナ情勢は凍結状態になるのではないか。米ロの対立はウクライナに絞ってみれば五分五分の引き分けとなる公算がある。
中国との対立が先鋭化している日本は、ロシアと接近する”ロシア・カード”を使おうとしている。少なくとも安倍政権の路線はそこにある。欧米首脳がソチ五輪に欠席したのに安倍首相はあえて開会式に出席した。だからウクライナをめぐる米ロ対立は予想外の展開となったといえよう。
オランダのハーグで開かれたG7=先進7か国の首脳会合で安倍首相は欧米寄りの姿勢を鮮明にした。このことが日ロ交渉にどう影響するか、軽々な判断はできないが少なくとも日ロ交渉のテンポはスローダウンせざるを得ない。
ロシアの天然ガスに依存してきたドイツなど欧州各国は、エネルギー政策の変更を迫られている。ロシアとしては天然ガスの輸出先を中国や日本に向ける可能性が出てきた。とはいえ日本が経済制裁をくぐり抜けてロシアと経済協力を積極的に進める環境にはない。
むしろロシア側から日本にどう接近してくるか、それを見極める必要が出てきた。単純なプラス・マイナスでは解けない連立方程式を安倍政権がどう解くか、難しい局面に立たされたといえよう。
杜父魚文庫
15712 難しくなった日ロ交渉の行方 古澤襄
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