15728 朴大統領の甘えと硬い顔 「今そこにある危機」より…   阿比留瑠比

25日夜にオランダで行われた日米韓3カ国首脳会談の冒頭部分をテレビで見て、韓国というのはつくづく厄介な国だなあと改めて痛感した。
それと同時にドイツの社会学者、マックス・ウェーバーの著書『職業としての政治』の中の次の言葉を連想した。ウェーバーの引用を好む政治家や政治記者が、なぜか、あまり取り上げない部分である。
「政治家にとって大切なのは将来と将来に対する責任である。ところが『倫理』はこれについて苦慮する代わりに、解決不可能だから政治的にも不毛な過去の責任問題の追及に明け暮れる。政治的な罪とは-もしそんなものがあるとすれば-こういう態度のことである」
さて、3カ国会談では、安倍晋三首相がわざわざ韓国語で「お会いできてうれしい」と語りかけたのに対し、朴槿恵大統領は返事も会釈もせず、硬い表情を崩さなかった。
イヤイヤ出てきたようなその様子は、北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射などで緊張が高まる東アジアの「今そこにある危機」の協議よりも、70年も昔の歴史問題の方がもっと重要だと言わんばかりだった。
日本では一般に、事の軽重、物事の優先順位が分からないことを「愚か」と呼ぶが、韓国では全く基準が違うのだとみえる。

もっともテレビに映らない場面では「安倍首相と朴氏は握手し、笑顔であいさつしていた」(同席した政府関係者)。朴氏の外交儀礼を無視した態度は、主に韓国内向けのポーズだったのだろう。
昨年9月にロシアで安倍首相と朴氏が立ち話をした際も、朴氏は非常ににこやかで会話の中身も常識的だったと聞く。ただ、朴氏は別れ際に首相にこう念を押すのを忘れなかった。
「私と握手したことは言わないでくださいね」
日本の首相に、少しでも歩み寄ったような印象を与えるのは政権運営上、朴氏としては避けたいところなのである。
理解し難いのは、世界でこれだけ日本の悪口をまき散らしながら、当の相手が自分の「演技」に付き合うのは当然だと考えているフシがあることだ。しかも米国まで巻き込んで、である。どこまで自己中心的で甘えているのか。
その上、朴氏は今回の3カ国首脳会談直前にも、独紙で「日本の一部の政治指導者らが、過去の歴史問題や慰安婦問題で韓国国民の心に傷を与え続けた」などと日本批判を展開している。これから会談する相手への配慮などまるでない。
そもそも、日韓関係が現在のように悪化したきっかけは2012年8月、李明博前大統領が歴代大統領で初めて竹島(島根県隠岐の島町)に上陸し、さらに突如として天皇陛下に謝罪を求めたことにある。
朴氏は日本が韓国国民を傷つけたと繰り返すが、日本国民にも感情があり、韓国側の言動に心痛を覚えているという当たり前の道理は理解できないらしい。
「情熱と判断力の2つを駆使して、どんな事態に直面しても断じてくじけない政治家でありたい」
安倍首相は今年1月の衆院本会議で、ウェーバーの言葉を引いてこう述べた。記者の心構えもかくありたいと思うが、韓国の頑迷さには時にくじけそうになる。(産経・政治部編集委員)
杜父魚文庫

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