【3月27日 シドニー/オーストリア AFP】マレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370便が墜落したと断定されたインド洋(Indian Ocean)南部の海域は、世界で最も隔絶された場所の一つとみなされており、「ブラックボックス」の捜索作業は、海底火山や高波といった手ごわい障害に悪戦苦闘を強いられていると、専門家らが26日、指摘した。
8日に乗客乗員239人を乗せて消息を絶った同機については、5か国の軍と日本の自衛隊が出動する前例のない国際捜索が行われているが、専門家らは、残骸回収が成功する確証はないと警告している。
豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)の海洋学者エリック・バン・セビル(Erik van Sebille)氏によると、同機が墜落したとみられる南緯40度付近は、船員らの間では荒波で知られ、「ほえる40度(Roaring Forties)」と呼ばれて恐れられている。「一般に、ここがインド洋で風と波が最も激しい海域」で、「冬、嵐に見舞われると、10~15メートルの波が見込まれる」という。
米戦略安全保障情報コンサルティング企業のソウファン・グループ(Soufan Group)は、そのような条件下で同機の残骸を探すのは「無秩序で、気分を悪くし知覚を狂わせ、乗り物酔いを引き起こす干し草の中を漂う1本の針を探すようなものだ」と表現し、「物体がある場所に目をやったとしても、不規則な波に隠されてしまうかもしれない。水面を反射する日光に、一時的に目がくらんでしまうかもしれない。物体が最も良く見える時に、視線が2度左に外れていたら、見過ごしてしまうこともある」としている。
一方、豪クイーンズランド(Queensland)州ジェームズクック大学(James Cook University)の海洋地質学者、ロビン・ビーマン(Robin Beaman)氏は、仮に海上で不明機の残骸と確認できるものが発見されたとしても、深海からのブラックボックス回収は、海底火山のせいで難航する恐れがあると指摘している。
同氏によると、捜索海域を南東インド洋海嶺(かいれい)(Southeast Indian Ocean Ridge)が横断しているため、この付近の海底は起伏が激しく、マグマの流れによって常に形状が変化している。また、平均して水深3000メートル付近にあるこの海嶺は、南極プレートとオーストラリアプレートが衝突する地点に形成された「極めて活発な」火山帯だという。
同氏はAFPに対し、「残骸が(火山活動が)活発な領域に落ちたとすれば非常に不運で、(回収作業は)さらに困難になる」と語り、「でこぼこしていて、断層や細かい溝、海嶺に覆われている上、(地質学的に見れば)新たに形成されたばかりで堆積物も多くない」と説明している。
同機が説明のつかないほど大きく針路を外れ、予定されていなかった方向に数千キロも飛行した理由を特定するには、フライトデータとコックピットの音声記録が不可欠だ。マレーシア当局は、搭乗していた何者かが意図的に針路を変更したという見方を示している。
豪シドニー大学(University of Sydney)の航空専門家、ピーター・ギベンス(Peter Gibbens)氏は、ブラックボックスが発する追跡信号は電池が切れる約2週間後に消えてしまうことから、捜索は時間との闘いになると指摘。「時間が経つにつれて難しくなる。情勢は不利だ」と話している。(AFP)>
杜父魚文庫
15733 海底火山に荒れ狂う海、不明機捜索を阻む障害 古澤襄

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