■防衛研が「東アジア概観」
<防衛省のシンクタンクである防衛研究所は4日、日本周辺の安全保障環境を分析した「東アジア戦略概観2014」を公表した。中国公船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺への領海侵犯が相次ぐ中、平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」が今後、激化・長期化する懸念があると警告し、事態が激化するリスクを抑える必要性を訴えている。
グレーゾーン事態は、昨年末に策定された防衛計画の大綱でも「領土や主権、海洋における経済権益をめぐり、増加する傾向にある」と指摘されている。具体例には言及していないものの、潜没航行する中国の潜水艦が日本の領海に侵入して退去要求に応じないケースなどが念頭にある。
「概観」では、グレーゾーン事態の抑止力強化に必要な要素として(1)米国などとの情報共有や間断のない対応(2)日本に対応能力があると認識させる能力(3)実効的な対応能力の整備-の3点を例示。その上で、防衛装備の「質と量」の充実が必要不可欠だとした。
一方、昨年12月の安倍晋三首相の靖国神社参拝に対する韓国の反発も分析。歴史認識の問題以外に「韓国にとって中国の重要性が増大し、日本が相対的に低下している」との側面を挙げた。その上で「政治レベルでの関係改善の遅れが(日韓両国の)防衛協力に影響を与える可能性も生じている。日韓双方の指導者の決断が求められる」と関係改善を求めた。
米中関係では、米国について「中国周辺での偵察活動や海洋権益や領土をめぐり、中国の主張に譲歩することにはならない」と分析した。中国については「米国との対立や衝突を避けながらも米国との対等な関係を模索する」と推測しつつ、「周辺国には海洋権益や領土問題でこれまで以上に独自の主張や行動を強めていくと予想される」と警戒感を示した。
一方、北東アジア情勢が深刻化する一つの原因として、国防力増強や安全保障関係の強化が、周辺国の対抗的な政策を引き起こし、結果的に軍事的緊張関係を高める「セキュリティジレンマ」が顕在化していることにも言及。首脳間の対話や国際交流、防衛交流の積み重ねが必要だとした。(産経)>
杜父魚文庫
15785 平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」激化懸念 古澤襄

コメント