■中韓の紐帯はいつから本格化したのか、なぜ「反日」で共闘できるのか。日本人が油断していた歴史の隙間をついた。著者積年の孝証、労作が実った
<荒木信子『なぜ韓国は中国についていくのか』(草思社)>
「読売新聞」(4月19日)が報じた、外務省が行った東南アジア諸国連合(ASEAN)の7か国における世論調査の結果をみて、或る意味で十分な納得がいく。
結果は「最も信頼できる国」に日本を挙げた人が33%でトップ。米国は16%で2位、そして中国は5%、韓国は僅か2%だったのである。
著者の荒木さんはこう言う。
「冷戦終結でイデオロギーの対立がなくなれば、その地域の原初的な国際関係が表面に表れる。もともと中韓の間には、『離れ小島』の日本には窺い知ることのできない長く深い歴史がある。
その2000年におよぶ紐帯に対して、日本が朝鮮を統治したのは僅か35年である。日韓併合、朝鮮戦争、それに続く冷戦という国際環境下で中国との行き来がブロックされている間は、韓国は中国から影響をうけずにいられた。
だが、国交が正常化され行き来が復活すれば、その動機がなんであれ、韓国が中国へ傾いていくのは『自然の摂理』のようなものだ。うかつにも私たちがそのことに気づいていなかっただけのことである」
評者(宮崎)は朴正煕政権時代、何回か韓国を取材し、その反共路線に共鳴した。当時、日本の保守陣営はほぼ韓国贔屓で、同時に韓国の政治家もほとんどが日本語を自在に喋り、親日派が多かった。嘘のような時代があった。
韓国は徐々に変身していった。カフカのような突然の変身ではなく「窯変」である。
そして中韓国交正常化から、「あっち」へ行ってしまった韓国が北京と反日で共闘するまでに、いかなる歴史があったか、その中韓連携の闇の真相に本書が挑んだ。
統計や韓国メディアの報道を丹念にたどった筆者は、92年の中韓国交正常化直後から韓国の中国傾斜が一気に進んだという、日本が気づかなかった結節点を突く。
しかし中韓両国の連携の中身は対等ではなく、韓国が望む北朝鮮への影響力行使には消極的な北京は、韓国を政治的にうまく利用しているに過ぎない。
「中国は北朝鮮との関係を保ったまま韓国への影響力を強めるというパワーバランスの図式ができあがった」つまり北京が「韓国カード」を日本に駆使する立場を得たのである、と分析されている。
杜父魚文庫
15811 書評『なぜ韓国は中国についていくのか』 宮崎正弘

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