■ウクライナ問題も懸案 邪魔される恐れ
【ワシントン】オバマ米大統領は今週のアジア諸国歴訪で、アジア重視の姿勢を示そうとしているが、この計画はウクライナ紛争によって邪魔される恐れがある。
大統領は、バイデン副大統領が2日間のウクライナ・キエフ訪問を終える22日、ホワイトハウスが対ロシア制裁の強化を検討する中で、日本に向け出発する。
大統領の訪問先は日本、韓国、マレーシア、それにフィリピンで、多くの予定が組み込まれている。大統領が昨年秋、米政府機関の一部閉鎖でアジア歴訪計画が取りやめたあと、安全保障、貿易問題が緊急性を増してきた。
今回大統領はウクライナ危機で重要な岐路に立っている。米政府は、ロシアが先週まとまったウクライナ情勢の緊張緩和のための合意を守るかどうか懐疑的だ。ホワイトハウスは21日、「今後数日間で」進展がなければ、ロシアに一段の代償を求めると警告した。
これはウクライナ情勢のエスカレーションによって、米国のアジア向けのメッセージから注意力がそらされてしまう可能性があることを意味している。ちょうど3月の大統領の欧州訪問時と同じようにだ。
大統領のアジア訪問の目的は、急成長するこの地域との関係の重視に軸足を移すこと(リバランス)を改めて強調し、経済・安保関係の強化の約束も改めて強調することにあった。
ただ、今回の訪問では具体的な取り決めには乏しくなる。米当局者も、目立った政策の発表よりも新たな弾みを付けることに焦点が置かれていると認めている。
ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、アジアには米国の指導力に対する強い要求があるとし、大統領はアジアを長期的に重視することを強調するだろうと述べた。ライス氏は「オバマ大統領は世界最大の新興地域であるアジア太平洋地域に軸足を移す戦略を追求してきた」としている。
ライス氏はまた、この訪問では重要な首脳会談はないとし、「それぞれの国での議題は2国間関係の強化、米のアジア戦略のさまざまな要素の前進にもっぱら焦点が当てられるだろう」と述べた。
しかし、2011年に米国の関心がシリア、イラン、中東和平交渉に移って、その軸足が繰り返し不安定になったと言われたように、大統領は懐疑的見方に直面するだろう。
今回はウクライナ問題があるのだ。戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問ビクター・チャ氏は「アジア諸国は米国の関心が少しそれていると感じているだろう」とし、「礼儀正しい友人たちは口には出さないだろうが、非公開の場所では米国の軸足はどこにあるのか開けっぴろげに尋ねると思う」と述べた。
米国の議員でさえホワイトハウスにはもっとやるべきことがあるとしている。上院外交委員会が先週出した報告は、若干批判的な見解を示し、リバランスの拡大を勧告した。報告は「ほとんどの国の政府は、この地域での米国のより大きな関与への支持を表明しており、同戦略は現在、まず軍事戦略として受け止められている。こうした受け止め方は民間部門の資源が少ないことで強まっている」と指摘した。
米当局者は、環太平洋連携協定(TPP)への期待を抑えようとしている。米高官は、日本との交渉はここ数日間で前進したとしながらも、今週の安倍晋三首相と大統領の会談は弾みを付けることが目的であり、突破口を開くことではないと語った。日米交渉では日本の自動車、農産物市場への米国の参入拡大などの問題が解決されていない。
オバマ大統領はまた、訪問中に現地の人々との交流も深めたい考えで、マレーシア・クアラルンプールではタウンホール・ミーティングも計画している。
各国ではウクライナは議題に上らないかもしれないが、各国は他の地域の紛争によって米国の注意がそれることはないとの確約を得ようとするだろう。
オバマ政権の国家安全保障会議(NSC)で東アジアを担当し、現在はブルッキングス研究所の上級フェローであるジェフリー・ベーダー氏は「各国は、中国が台頭する中で米国のプレゼンスが揺るぎなく強力だという言葉を聞きたがっている」と話した。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫
15812 オバマ大統領、アジア重視を強調へ 古澤襄

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