15829 米国に歓迎される安倍首相の防衛体制改革プラン   古澤襄

■近隣諸国には不安も
【東京】安倍晋三首相が過去60年にわたり自衛隊を制限していた要因を取り除こうとしており、米国のオバマ政権は21日、それを支持すると表明した。しかし、安倍首相の目標はアジア太平洋地域の安定を損ないかねない。
オバマ大統領は23日に訪日した際、日本が中国の台頭に脅威を覚え、同盟諸国を守ることに関する米国のコミットメントを不安視している様子を目にすることになろう。
地域の安全保障で日本が担う役割を強化するため、安倍首相は「集団的自衛権」を行使できるよう憲法解釈を改めたいと考えている。集団的自衛権が行使できれば、自国が攻撃されていなくても、同盟国が攻撃された場合に反撃が可能となる。
理論的には、北朝鮮の弾道ミサイルが米国に向けて発射された場合、それを日本が打ち落とすことも可能となる。また、オーストラリアの軍用船と戦っている中国の軍艦に向けて発砲することも可能だ。日本と中国が領有権を主張している東シナ海の島しょをめぐる衝突の際にも、以前より柔軟な対応が可能となる。
「アベノミクス」と呼ばれる経済成長戦略とともに、こうした防衛体制の転換は安倍首相にとって最優先課題だ。
安倍首相は2月の衆院予算委員会で、自ら設けた制限のために米艦船に対する攻撃に反撃できなければ、「日米同盟に対するダメージは計り知れない」ものになると述べた。

安倍首相の側近が描くシナリオによると、内閣は夏頃に憲法解釈の見直しを閣議決定し、秋の臨時国会で必要な法改正を行いたい意向だ。ただ、連立政権内には消極論もあり、タイミングについては流動的だ。
日本の防衛面での役割が増大すれば、米国にとっては防衛費削減にうまく対処するための一助となる。米国防総省の当局者は中国の軍備強化に合わせて日本はもっと対策をとる必要があるとして、こうした取り組みを支持してきた。
同省のジェフ・プール報道官は21日、「国防総省は集団的自衛権に関する日本の憲法解釈の再検討を歓迎する」とした上で、「これが地域の繁栄と安全保障を前進させ続けるために、米国と日本がこれまで以上に行動をともにできることを可能にすると確信している」と述べた。
また、中国と領有権問題で反目している東南アジアの数カ国は、日米両国がより強固な安全保障体制を構築するよう望む、あるいは切望しているところもある。
だが、自衛隊により大きな柔軟性を持たせることは、外交面で頭痛のタネにもなり得る。自衛隊の活動拡大はいかなるものであれ、中国と韓国の嫌疑を買うことになるからだ。両国とも第2次世界大戦中の日本軍の行為を、日本は適切に償っていないと考えている。
日本国内でも、世論調査によると、有権者の過半数が憲法解釈の見直しに反対している。

1950年代に自衛隊が創設されて以降、自衛隊の任務は国を守るという狭い範囲に制限されてきた。アジアのどこかで自衛隊が戦うという考えは――たとえそれが同盟国である米国を助けるためであっても――依然として支持されていない。
さらに言えば、日本の政府関係者の中には、米国を不安にさせるような見方で自衛隊の活動拡大をとらえている向きもある。ウクライナやシリアなどの脅威に直面する中で、世界に対する米国の関心が弱まりつつあることへの対応だというのだ。
元防衛大臣で自民党幹事長でもある石破茂氏は最近の演説の中で、中国の力が大きくなる一方で米国の相対的な影響力が弱まっているとした上で、どうすれば戦争を避けることができるか真剣に考え始めなければならないとの考えを示し、中国の台頭に対抗するため、北大西洋条約機構(NATO)のアジア版を作る構想を披露した。
米政府関係者は繰り返し、衝突時に日本を防衛するという米国のコミットメントは強固なものであると表明してきた。政府関係者によると、米国は最近、他の地域の衝突に関心を向けていたにもかかわらず、オバマ大統領は日本と他の同盟諸国に対し、アジアへの米国のコミットメントの再確認を図る予定だという。
コロンビア大学教授で日本の政治の専門家でもあるジェラルド・カーティス氏は「重要なのは地域で起こっていることに注意を払い、(オバマ政権が)これまで行ってきたものより持続的かつ実質的な方法で主要同盟国と関わり合うことだ」と指摘した。
専門家は、オバマ大統領が訪日中に日本の防衛体制の再構築の価値をはっきりと認めることが重要だと指摘する。オバマ大統領が訪日中に「集団的自衛権」という言葉を用いる可能性は低いが、安倍首相の取り組みを認める必要がある、とマイケル・グリーン氏は指摘する。グリーン氏はワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)でアジア担当のシニア・バイス・プレジデントを務めている。
ホワイトハウスは21日、日本の防衛体制の見直しを支持すると表明した。
国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長、エバン・メデイロス氏は「日本はアジア太平洋地域と世界に平和と安全保障を促し、かつ実現していく上で重要な役割を担っている。われわれはそのための日本のあらゆる取り組みを支持し、後押しする」と述べた。
オバマ大統領の日本での滞在計画は、日本の政府関係者が強く望んでいたシグナルを送ることになった。大統領は国賓待遇に必要な2泊3日の予定で滞在するためだ。米国の大統領を国賓待遇で迎えるのは1996年のクリントン大統領(当時)以降、初めてとなる。
滞在中に予定されている行事は、昨年12月に安倍首相が靖国神社を参拝したことで生じた日米間の摩擦を緩和することになるかもしれない。安倍首相の靖国神社参拝は近隣諸国を怒らせ、米国には「失望した」という異例の声明を出させることになった。
米議会調査局は2月の報告書に、「米国の有識者の多くは、安倍首相がポジティブ、ネガティブの両面を日米同盟にもたらしたと見ている。一度はこれを強化しておきながら、地域の安全保障環境を乱し得る歴史的な敵意を焼き直したことによってだ」と記している。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫

コメント

  1. めじろ より:

    記事収録ありがとうございます。
    本文冒頭に「【東京】」とあるために、何かからの引用だと
    思って読んでいましたが、引用の終わりがわかりません。
    途中で何カ所も文字が太字になり、もしかして引用が終わって
    引用者の地の文なのかとも混乱します。
    最後に「(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>」と
    結ばれていたので、全文が引用だったのかとわかりました。
    せっかくのブログ記事なので、引用の際には、もうすこし
    工夫いただけたらと思いました。

タイトルとURLをコピーしました