<憲法記念日です。それでなくても憲法をめぐる論議がまた一段と広がっています。集団的自衛権の解禁の是非が当面の主要課題のようです。
しかしいまの日本の憲法では日本の国土が守れないことは明白です。
たとえば尖閣諸島に中国側の軍事侵略、あるいはゲリラ的な侵攻があった場合、日本の自衛隊はその相手の攻撃が「組織的かつ計画的」であることを証明しなければ、武力での防衛はできないのです。
そんな緊急時に侵攻してくる相手の武装勢力の意図が「組織的かつ計画的」であるか否かをどうやって知るのでしょうか。こんな自縄自縛の規制は日本国の現行憲法が根拠です。
しかもこの日本国憲法は占領時代にアメリカの一群の若い軍人たちによって10日間で書かれました。その目的は日本を永遠に非武装にしておくということでした。
私はその憲法起草の実務責任者に長時間、話を聞きまいた。驚くべき日本憲法押し付けの実態を彼は詳細に語ってくれました。敗戦後、アメリカの占領下にあった日本ですから、当時の状況としてはやむをえないことだったでしょう。
しかしそんな異様な状況を70年後のいまも金科玉条のように保とうとする。さらに日本の憲法はアメリカが書いた事実をみようとしない。護憲という空疎なスローガンを叫ぶ人たちに求めたい基本点です。
そのへんの実態を私は下記の自書で説明しました。
■憲法が日本を亡ぼす 古森義久(こもり よしひさ) 本体1600円+税
戦後の日本は、太平洋戦争の大敗にもかかわらず、驚異的な忍耐力と不屈の精神で、世界第2位の経済大国へと成長しました。その要因はいくつもありますが、最たるものは日米関係です。
敗戦国の日本が経済成長に一心不乱に傾倒で きたのも、米国という超経済大国であり、超軍事大国である世界屈指の強国の後ろ盾があったからです。しかし、自民党から民主党へと政権が移って、その基盤が揺らぎました。
また、集団的自衛権を否定する内閣法制局の憲法解釈の結果、アメリカは日本を守るが日本はアメリカを守らない、という極めて片務性の高い状態にあります。
また、日本が防衛費を削り続けて軍備で怠慢を続けた結果、アメリカ政府の担うアジア周辺への防衛戦略における予算は高まり、それに伴ってアメリカ兵の負担 も増加しています。その結果、アメリカでは日本の改憲を望む声も出始めました。
本書では、日米関係が今どのような状態にあるのか、をワシントン在住の著者の視点から的確に読み解き、今後の日本が進むべき道を探ります。
■アメリカの尖閣防衛を楽観するな
キーワードは「拡大抑止」と「特定秘密保護」、オバマ訪日の隠れた成果を総括する。
だが、この点に関しては、日本側は楽観視しすぎているようである。日米安保条約の中で、中国が日本の尖閣諸島に武力攻撃をかけてきたときの米国の対応について規定するのは第5条である。その条文の骨子は以下の通りだ。
「(日本と米国の両国は)日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」
この第5条の尖閣諸島への適用をオバマ大統領が明言し、日米共同声明にも明記されたわけだ。日本側は、この明言で尖閣諸島に対する武力攻撃には米国が必ず介入して、日本側を守ることを誓ったと解釈し、歓迎した。
ただし、日本の施政権下にある領土への第三国の武力攻撃に米国も日本側と共同で対応することは、日米安保条約の核心として長年はっきりとうたわれてきている。オバマ大統領自身がその点を明言したことについては特別の意義があると言えるのかもしれないが、特別に新しい政策ではないのである。
また、第5条の条文を読むと、日本の施政権下にある領土に武力攻撃があっても、その対応は日米両国が「自国の平和と安全を危うくする」ことを認め、さらに「自国の憲法上の規定と手続に従って」発動されるという趣旨が規定されている。つまり、日本への武力攻撃があったから米軍が自動的に反撃のための行動を起こすというわけではないのである。この点は日本側も注意しておくべきだろう。(終わり)
杜父魚文庫
15946 なぜ憲法が日本を亡ぼすのか 古森義久

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