15960 ウクライナ東部で騒乱広がる   古澤襄

■政府の掌握さらに揺らぐ
<【モスクワ】ウクライナ東部では、同国暫定政権が親ロシア派武装集団鎮圧作戦を強化し、幾つかの都市で衝突が伝えられるなど、一段と緊張が高まった。一方、これまで平穏だった2つの地域で防衛部隊が編成された。
週末3、4の両日にかけて、少なくとも東部の6都市で衝突が発生した。これは、2日に南部の黒海沿岸都市オデッサで衝突や火災で過去数週間で最多の死者46人を出したのに続く衝突だ。3日朝方、ウクライナ政府軍部隊は東部ドネツク州スラビャンスクを包囲し、市内にある反政府勢力の拠点を奪還しようと再攻勢を掛けた。
ウクライナ内務省によると、オデッサでは46人の死者を出した2日の騒乱で多数が逮捕されたのを受け、親ロシア派のデモ隊数百人が4日、オデッサの中央警察署の外に集まり、逮捕者の釈放を要求した。地元のニュース報道では、集まったデモ隊は建物にブロックを投げ、中に乱入しようとしたが、当初は押し戻された。
にらみ合いのあと、検察当局は2日に逮捕された67人の釈放を命じた。
ウクライナのヤツェニュク首相は4日、オデッサの2日の騒乱の際に暴力を阻止するのを怠ったとして地元治安当局を非難し、「完全で包括的で独立した調査」を行うと述べるとともに、暴力扇動に加担した集団を突き止めると語った。
その前日にはウクライナ内務省がオデッサ州の警察トップを更迭する一方、200人近くを逮捕したと発表している。ヤツェニュク首相は、州全体の警察部隊を再編すると語った。
戦闘の規模拡大は、紛争がより危険な段階に入っていることを示すもので、ウクライナ暫定政権の東部掌握を揺るがしている。東部では同政権からの自治権拡大を求める動きが強まっている。
一方、ロシアは、東部におけるウクライナ軍の作戦に対する非難を一段と強め、市民に対する武器の使用は犯罪行為だと糾弾している。ロシアのラブロフ外相は3日、ケリー米国務長官に電話で、戦闘は「この国(ウクライナ)を同胞相争う戦争に追い込みつつある」と述べた。
ロシア外務省は4日、ウクライナは作戦遂行で「一部の共同体を浄化(民族浄化)し、他の共同体を阻止している」と非難し、欧州安保協力機構(OSCE)と欧州評議会に対し、「ウクライナ動向の客観的な査定評価」を実施するよう求めた。
ロシア下院のミハイル・マルケロフ議員(プーチン大統領の与党・統一ロシア所属)は4日、「最悪のシナリオの中で、ウクライナがユーゴスラビアでみられたような運命に向かっているのをわれわれは認識し始めている」と述べ、1990年代初頭にユーゴスラビアで見られたのと同様の血塗られた紛争に向かっている恐れがあるとの見方を示した。
ウクライナ政府と西側は、ロシアが騒乱を扇動しており、高度に訓練されたロシア軍・情報将校を派遣して反乱集団の一部を組織していると繰り返し非難している。ロシア政府は、関わっていないと否定し続けている。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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