16033 親ロ分離派が勝利宣言   古澤襄

■ウクライナ東部住民投票で
<ウクライナ東部の親ロシア派勢力は11日、ドネツク、ルガンスクの両州で独立の是非を問う住民投票を強行し、開票が始まるとただちに勝利宣言を行った。ウクライナ暫定政権や西側諸国は、住民投票を違法と非難している。ロシアは住民投票を承認するとみられ、同国と暫定政権との間の緊張は一段と高まりそうだ。
住民投票では、一部投票所で長い行列ができ、過去数週間の政治混乱と暴力の結果、両州の住民の暫定政権に対する反感が公然たる反抗と分離の動きにつながっていることを示した。
親ロシア派の発表によると、午前0時を過ぎた時点で、ドネツクでは89%が分離に賛成、10%が反対票を投じた。無効票は1%だった。投票率は75%に達した。この数字が疑問視されるのは確実だ。先月の投票では分離賛成は30%に過ぎなかった。
選挙管理人はおらず、親ロシア派の武装集団が街中を巡回しており、ウクライナ暫定政権は選挙結果が操作されるのは間違いないとしていた。親暫定政権派は、独立に反対の人は多くが投票を棄権しており、長い行列が出来たのは投票所の数が少ないためだと指摘する。
先週、親ロシア派とウクライナ軍が衝突し死傷者を出したドネツク州の都市マリウポリでは、投票所には数千人の長い行列ができていた。投票所が4カ所しか設営されなかったという。一方、親ロシア派は、この地域に1500カ所以上の投票所を設置したとしている。ドネツクの投票所のある当局者は、一人の人が何度も投票するのを阻止する方法は講じていないことを明らかにした。
暫定政権は、住民投票を見せかけだと一蹴し、大統領府高官は「実際には住民投票といえるものではなく、犯罪を覆い隠すための情報キャンペーン以上のものではない」と非難した。しかし、親ロシア派は今回の住民投票を、ウクライナからの独立宣言に利用するとみられ、両州はロシアが支援するモルドバとグルジアにおける分離・独立派地域のように国際的に孤立する可能性がある。
米国務省は週末、「ロシアが支援するソーシャルメディアや報道機関がウクライナ東部の住民に投票を呼びかけ、モスクワにも投票所をもうけた」と批判した。
欧米諸国は25日に予定されているウクライナ大統領選を重要視している。米国務省は「ロシアがウクライナ東部を混乱させ大統領選を妨害すれば、さらに高い対価を払うことになる」と警告した。
ロシアのインタファクス通信によれば、ドネツクの親ロシア派リーダーは、「できる限り早急に国家と軍を設立することが重要である」とし、住民投票結果を受けて両州に駐留するウクライナ軍は違法な占拠者と認定されるとの見通しを明らかにした。ロシアは、ウクライナの分離派を支援しているとの見方を否定し、暫定政権こそが極右政策をとっていると非難している。
世論調査では、ドネツク、ルガンスクの両州の住民の大半はロシアと緊密な関係を維持することを望みながらも、ウクライナにとどまることを支持しており、住民投票で親ロシア派が勝利する可能性は小さいと、最近までみられていた。しかし、政権軍と親ロシア派の戦闘を受けて、多くの住民が政治の安定を期待してか、独立支持に傾いたとみられる。
ドネツク中心部の投票所に現れた住民の1人は、「国家が国民に銃を向ける国を誰が支持するだろうか」と問い、「ウクライナに帰属することには反対ではなかったが、最近の出来事で気が変わった」と話した。
ウクライナ東部の産業基盤は輸出依存の重工業だ。独立を宣言した場合、国際的に孤立の道を歩むことになり、経済が機能不全に陥る恐れがある。ロシアは、東部2州についてはクリミアのように併合することに関心を示しておらず、両州は輸出市場を失い失業が増える恐れがある。暫定政権は、東部の多くの地域について支配権を失っており、住民投票を阻止することはできなかった。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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