16034 馬鹿な議論は敵より恐い   西村眞悟

以前に指摘したことがある、「馬鹿な大将、敵より恐い」に付け加えて、「馬鹿な議論は、敵より恐い」と申しておきたい。
前者は、阪神淡路大震災における総理大臣村山富市、さらに、東日本大震災における総理大臣菅直人、この二人で、被災地の人々は骨身にしみたはずだ。
後者は、現在、政府与党内で行われている集団的自衛権等に関する議論、また公明党を説得するために行われている議論だ。
本日の産経新聞朝刊の一面見出しは「集団的自衛権に9事例、政府グレーゾーンも明示」、「公明と議論狙う」
そして、記事は、政府が憲法解釈の変更や関連法整備に向けて事例集をまとめ、その全容が十一日に分かった、と伝えている。
要するに、政府による、「我が国の自衛隊は、このケースはできる、しかし、このケースはできない」という一覧表(事例集)の公表で、「これら全てを可能とするには少なくとも、18法案・協定の改正が必要で、石破幹事長曰く、公明党との調整で見切り発車はしない」ということだ。
つまり、公明党がOKを出さねば、前進なしと自民党の幹事長が言っている。あほらし。
そこで、まず第一に指摘すべきは、この検討が、我が国の一番切実な問題である国防!に関する議論であるということだ。
具体的に言えば、これは、我が国に対する中国人民解放軍の、我が国の領土領海強奪を目指す海と空における攻勢と核ミサイルの脅威、さらに北朝鮮の核ミサイルの脅威、をアメリカとともに如何に抑止し封じ込めるか、という切実な課題である。
この切実な課題に関して、「このケースはできる」、「このケースはできない」という一覧表を公表して議論する馬鹿が、我が国の政府以外に何処にいる。
敵は、「このケースはできない」と我が国が公表しているケースを狙って攻めてくるではないか。つまり、城でたとえれば、「防備のない箇所」を敵に公表しているようなものだ。
城の無防備な箇所を敵に教える奴が城内におれば、そいつは、敵より恐いではないか。
次に、集団的自衛権行使の議論を、我が国の政界、マスコミ、学者は、大学の法学部のゼミに参加しているようにしている。
これも、脳天気というべきだ。ことは、国防に関することだ。つまり国家の具体的脅威を如何に阻止するかに関することである。
従って、この議論を見守っている敵(脅威)がいる!ということを瞬時も忘却してはならない。
しかも敵は、スパイ防止法のない我が国においては、政界マスコミまた学者に対する工作活動による影響力を行使してこの「ゼミ」の議論を自分に有利なように誘導することができる。
「自分に有利なように」とは、我が国が集団的自衛権を行使できないことである。従って、現在の我が国の議論の情況を、「敵(脅威)が喜ぶような議論」をしているのは、何処の誰だ、という観点から見極める必要がある。
さて、再三指摘するが、この議論は、国防に関することである。つまり、自衛隊を如何に運用するのかという議論である。
しかるに、新聞が報道しているように、政府が公表する「事例集」に従って自衛隊を運用するとすれば、18の法律・協定を改正しなければならないらしい。
しかし、ちょっと待て、と言いたい。政府も与野党も、つまり今の政界は、自衛隊を警察を運用する方式で運用しようとしているのである。従って、政府は、可能なことを法律に書いて「してもよい」として、法律に書いていないことは「してはならない」と言う前提で自衛隊を運用しようとしている。
この運用方式をポジリストというが、これは警察の運用方式であって、自衛隊を、これからも、このポジリストで運用すれば来るべき有事に我が国は敗北する。
 
自衛隊は、ネガリストで運用しなければ、我が国は有事を克服できない。
ネガリストとは、法で「してはならない」と明記されていることはできないが、明文で禁止されていないことは「できる」という運用方法である。
 
集団的自衛権の議論を機に、政治家は、我が国は自衛隊をネガリストで運用しなければならない、そうでなければ危機を克服できない、という問題意識を明確に持つべきである。
我が国と共同して東アジアを脅威を抑止しようとするアメリカ軍も、敵の人民解放軍も、ともにネガリストで行動している。
その時、我が国の自衛隊だけが、何が起こるか分からない有事に、「事前に法律に書いていないことはできません」という前提で動けば、アメリカ軍およびアメリカ国民との信頼関係は崩壊し、我が国は敵に敗れる。
以上が、昨今の議論に関して指摘しておきたいことである。そして、この議論に関する感想は、冒頭に言った。「馬鹿な議論は敵より恐い」
これからの自衛隊は、アメリカ合衆国と同様に我が国にも存在する次の二つの原則によって運用されるべきである。
(1)行政権は内閣(大統領)に属する(憲法六十五条)
(2)内閣総理大臣(大統領)は自衛隊(軍隊)の最高指揮官(コマンダー イン チーフ)である(自衛隊法)
杜父魚文庫

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