16044 フレデリック・フォーサイスの「戦争の犬たち」   古澤襄

来日したこともあるフレデリック・フォーサイスの小説「戦争の犬たち」を読んだ時には国際スパイ戦争という架空の世界としか思えなかった。私たちの頭にあるのはフランスの「外人部隊」。実在はしていたが、これも映画の世界のお話であった。
それがイラク戦争で「民間軍事会社」という聞きなれない呼称で登場した。しかも陸上自衛隊の最精鋭部隊・第1空挺団に所属したこともある日本人の民間軍事会社員が武装勢力に拉致された後、死亡した事件が発生して話題となった。
この民間軍事会社はイギリスの警備会社「ハート・セキュリティー社」。
米ソ冷戦が終結して各国とも軍事費と兵員の削減を行い退役軍人を生み出したが、これに目をつけた民間の軍事サービス業が生まれている。とくに2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、アフガンやイラクでテロ対策の一環として民間軍事会社が多用された。
イラク戦争以降は大国同士がぶつかりあう大規模戦闘が少なくなり、テロや小規模の内戦、民族紛争という小規模戦闘が頻発しているからコストがかからない民間軍事会社が伸びた側面がある。とはいえ高給で抱えられる傭兵集団というのは実態と違うようだ。民間軍事会社もご多分にもれずコスト削減を求められている。
加えて正規軍でない”闇の軍隊”だから戦傷や戦死といった戦時補償の枠外にある。最近では先進国の軍務経験者よりもアフリカなどからの後進国からの隊員が増えているとの説もあるが実態は分からない。フレデリック・フォーサイスが描いた戦闘後にロンドンで豪勢な遊びをする傭兵たちは、やはり小説の世界。
ドイツ紙が伝えたウクライナに投入された米民間軍事会社の要員は約400人は、どのような性格のものか実態がはっきりしない。むしろウクライナ暫定政権が脆弱なウクライナ軍の補強のために兵站・整備・訓練・教育・戦闘の軍事顧問団として迎えた可能性がある。それがウクライナ軍のテコ入れになるか、多分に疑問が残るのだが・・。
杜父魚文庫

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