16048 日本にマイナスに働くウクライナ情勢   古澤襄

考えてみればウクライナ問題は日本にとってマイナスの作用をしたと思わざるを得ない。
ウクライナ問題がなかったと仮定しよう。反日中国に手を焼いている日本はロシアに接近し、北方領土問題で一定の決着を図ったうえで、ロシアとの経済協力を前進させる。それが間接的に中国の反日姿勢を和らげる力学として働く。いうならロシア・カード有効活用というわけだ。
取らぬタヌキの皮算用かもしれないが、トライしてみる価値はあった。
しかしウクライナ情勢が緊迫化して、この計算は成り立たなくなった。新しい米ロ冷戦ともいうべき現状では、ロシアは日ロ関係よりも中ロ関係に傾斜したのは明らかとなった。日本も欧米を無視して日ロ関係を前進させるのは難しくなった。北方領土問題の解決は遠のいたとみるべきであろう。
ただ中国の覇道に変化の兆しがみえる。尖閣諸島の問題で強行措置にでれば、日米軍事協力が強化される力学が働いている。中国の狙いは日米離間策にある。強行措置は”上策”といえないから、しばらくは模様見を決め込むのではないか。
代わって出てきたのは南シナ海における強行措置である。
中国なりにしたたかな計算を働かせている。米比軍事協力が強化されても、ベトナム戦争を戦った米国は米比軍事協力並の米越軍事協力には二の足を踏む。ASEAN諸国には中国寄りの国もある。なによりもオバマが戦争を忌避する反戦主義者であるから、少々の強行措置は通ると楽観している。
まさに南シナ海の波高しというのが現状ではないか。日本は東シナ海の台風が去ったと見てはいけない。中国は尖閣奪取の野望は捨てていない。腰が定まらないオバマの尻を叩くくらいの外交力を働かせないとほぞを噛むことになりかねない。何よりも日米離間策には乗らないことを第一に考えるべきであろう。
杜父魚文庫

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