ドイツのシュタインマイアー外相は13日、反政府勢力と話し合いをするとのウクライナ暫定政権の計画を支援するため同国の首都キエフを訪れた。これは、交渉に誰が参加するのかは依然明らかではないが、ウクライナ危機を調停しようとする西側の外交努力が強まっていることを示している。
ウクライナ政府が14日に開始を計画している一連の「円卓」交渉が、一段と広がっている同国の溝を埋められるのかどうかは不透明だ。同国東部のドネツク、ルガンスクの両州は12日、独立を宣言した。ウクライナ政府は交渉参加者のリストの公表を拒否しているが、東部地域で省庁の建物を占拠し、政府がテロリストと見なしている分離主義グループの指導者は除外されている。
シュタインマイアー外相はウクライナのヤツェニュク首相と並んで、「われわれは国民の対話を進めようというあなたたちの努力を支持する」とし、「この状況の中で建物占拠が終わり、違法なグループの武装解除が少しずつ進むことを望んでいる」と語った。
同外相は、欧州連合(EU)との協議のためにブリュッセルに向かう途中のヤツェニュク首相と空港で会った。同首相はEUとの協議では、地方の自治を拡大するための憲法改正提案が焦点となるだろうと話した。首相は誰と協議するかは述べなかった。
ヤツェニュク首相はその後ブリュッセルで、ウクライナでの緊張を緩和させる上で欧州安保協力機構(OSCE)の役割は大きくないとの見解を示した。首相は「ウクライナ政府が提案したロードマップはいくつかの点で(OSCEの)ロードマップと似ていることは素晴らしい」としながらも、「しかし、これはウクライナが主導し、ウクライナが持つものなのだ」と指摘した。
ウクライナ危機を鎮めるための西側の努力のトップにあるのは話し合いを進めることだ。メルケル独首相は5月4日、プーチン・ロシア大統領との電話会談でこれを提案した。プーチン大統領はその3日後にOSCEのブルクハルター議長(スイス大統領)と会ったあと、この提案を支持すると述べた。
しかし、ロシア外務省は、「現在のキエフ政権は地域代表、まずは東部と南部の代表と真剣な対話に消極的だ」とし、これが「緊張緩和への重大な障害になっている」と述べた。
ロシアは、ウクライナを連邦制に変えて地方により大きな権限を与えるための憲法修正が必要だとし、これによってロシア語を話す人たちの権利が保障されると主張している。ウクライナ政府も地方により多くの権限を与えるとしているが、ロシアが求めるような広範な連邦制は、欧州への一段の接近などの決定で親ロシアの州に拒否権を与える恐れがあるとして反対している。
ロシア外務省は、地方権限の強化に関する話し合いは5月25日の大統領選挙の前に行われなければならないとしている。シュタインマイアー外相は、自分の目標の一つは大統領選が確実に行われる方法を見つけることだと語った。
ロシア政府は、ロシアに編入されるべきだとしたドネツク州の分離主義者らの12日の要求にはまだ反応を示していない。アナリストは、ロシアがこの要求を受け入れる公算は小さいようだが、分離主義者を使ってウクライナ政府への圧力をかけ続ける可能性があると話している。
ドネツク人民共和国のモスクワ代表アンドレイ・クラマル氏は「ロシアに要請すれば、ロシアは喜んでドンバス(ドネツク州を含むウクライナ東部地域)を編入すると思う」と述べた。同氏はまた、同共和国が隣接するルガンスク州の分離主義指導者らとの間で合同指導部を作ることを話し合っていると明らかにした。
ウクライナのグロイスマン副首相(地方政策担当)は、政府は税収の使途や地方病院、学校、警察について地方指導者の権限を拡大する法案を年内に成立させようとしている、と述べた。また、この見直しはロシアが連邦制を要求してくる以前に検討されていたとし、「われわれは、より多くの資金とパワーを地方に提供するための大規模な改革をしようとしている」と語った。
しかし、政府は東部の人たちが自分たちの代表だと思える指導者を見つける上で困難に直面している。ヤヌコビッチ大統領が2月に追放されるまで東部で大きな政治力を持っていた政党「地域党」は人気を失い、キエフには選挙で選ばれた東部を代表する人がほとんどいない。政府は一方で、選挙を経ない分離主義者の代表とは交渉しないと断言。グロイスマン副首相は「われわれは誰とでも話し合うが、殺人者たちとは話し合うつもりはない」と強調した。
シュタインマイアー外相はキエフで要人と会ったあと、ロシアとの緊密な関係を望むウクライナ人と接触するために、圧倒的多数の市民がロシア語を話す南部の都市オデッサに向かった。同外相はここで、親ロシア派活動家を含む40人以上が死亡した5月2日の労組ビルでの火災に関して州知事に悔やみの言葉を述べた。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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