16071 世界の約4分の1が反ユダヤ的見解に賛同   古澤襄

■調査で示された反ユダヤ的見解を持つ人の割合
世界規模で実施された世論調査で、世界の人口の約4分の1がユダヤ人についての否定的見解を「恐らく真実」と考えていることが分かった。この調査は反ユダヤ主義が世界にどれほど広がっているかを統計的に裏付ける狙いで、101カ国とパレスチナ自治区を対象に実施された。
13日に発表された調査結果によると、回答者の26%がユダヤ人についての11種類の否定的見解のうち、6つ以上に賛同した。調査のスポンサーはこうした否定的見解をユダヤ人に対するステレオタイプな見方だとしている。その中には「ユダヤ人は(自分の)母国よりもイスラエルにより強い忠誠心を持っている」「ユダヤ人は実業界で過大な権力を握っている」といった項目がある。
反ユダヤ主義などの偏見と闘う主要組織、名誉毀損防止同盟(ADL)がこの調査のスポンサーとなり、ニューヨークの実業家で慈善家でもあるレオナルド・スターン氏が資金を提供した。世論調査会社ファースト・インターナショナル・リソーシズは96の言語を使って5万3100人に面会した。スポンサーによると、反ユダヤ主義についての調査としては過去最大だった。
ユダヤ人より好感度が低い宗教グループはイスラム教徒だけだった。ユダヤ人に好意的な人の比率は38%、そうでない人の比率は21%。イスラム教徒に対しては、それぞれ47%と24%だった。対照的にキリスト教徒に好意的な人の比率は62%、そうでない人の比率はわずか15%だった。
イスラエルと対立することの多い中東や北アフリカの国々では、反ユダヤ的な人(11項目のうち、6つ以上を支持した人)の比率が平均74%と、圧倒的に最も高かった。これらの地域以外では、ギリシャが69%と最も高かった。経済が傾いてくると、反ユダヤ主義などの偏見が高まってくる。ギリシャ経済が悪化するなかで、現地のネオナチ政党「黄金の夜明け」は、こうした苦しみの責任はユダヤ人やその他のマイノリティーにあると主張して勢力を伸ばしている。
■主な宗教グループに対して好感(黄色)と反感(赤)を持つ人の比率
韓国の調査結果をみると、ユダヤ人が近くにいるから否定的な見方をするわけではないことが分かる。反ユダヤ的な人の比率は53%だったが、オンライン百科事典の「ユダヤ・バーチャル・ライブラリー」によると、韓国在住のユダヤ人は100人だ。
調査対象者全員が反ユダヤ的見解を支持したわけではない。26%が反ユダヤ的な11の項目の6つ以上に賛同した一方、28%はどの項目も「恐らく真実」ではないと確信していた。
米国では9%が11項目のうちの6つ以上に賛同した。世界の中でも反ユダヤ的な人の比率が最も低い国の1つとなった。ADLは米国に限って随分前からこうした調査を実施してきた。1964年の第1回調査ではこの比率は29%だった。
これとは別に、回答者の35%がホロコースト(ナチスによるユダヤ人大虐殺)について聞いたことがない、という事実も今回の調査で判明した。66%はホロコーストについて何も知らないか、あるいはこれが歴史としての正確な説明だと信じていなかった。
年齢別では、年配の人より若者の方がホロコーストを知らなかった。50歳超では61%が知っていたが、35歳未満では48%しか知らなかった。70年近く前に苦しい時期を生き抜いた人たちがいなくなるにつれ、この惨劇を知る人はますます減るとみられる。
中東・北アフリカ地域の中でも、ヨルダン川西岸とガザは反ユダヤ的な人の比率が93%と最も高い地区だった。その次はイラクで92%。イランは56%と域内では最も低かった。
2大新興国の中国とインドは20%と、世界平均を下回った。
■パレスチナ議長、ユダヤ人虐殺を非難―イスラエルは複雑な反応
最近起きた幾つかの事故をきっかけに、反ユダヤ主義についての認識が世界中で高まった。米国では、長らく反ユダヤ的だった男性がカンザスシティーにあるユダヤ系施設の外で3人を殺害したが、この3人はいずれもユダヤ人ではなかったことが判明した。
欧州では、フランスのコメディアン、デュードネ・バラ・バラ氏がナチス式敬礼の変形とみられているジェスチャー「クネル」を広めている。彼の一部ファンは、シナゴーグ(ユダヤ教教会)や墓地などのユダヤ教関連の場所でクネルをしている自分の写真をサイトに掲載している。
ウクライナでは、親ロシア派と親欧米派がお互いを反ユダヤ的だとののしり、双方とも相手方の告発を否定している。現地のユダヤ教の聖職者も、この告発をおおむね否定している。調査結果によると、反ユダヤ的な人の比率はウクライナでは38%、ロシアでは30%だった。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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