16132 遠隔地に高くつく天然ガス・パイプライン   古澤襄

中国・上海でロシア産天然ガスの中国への供給契約を中ロ両国は締結した。契約額は30年間で4000億ドル。
ロシアが欧州に供給している天然ガス量の三割に当たる。料金面では友好国、非友好国といった四ランク制をとっているので、最友好国の扱いをロシア側はとった筈である。少なくとも欧州向け価格よりも低い配慮があったであろう。
それでも中ロ交渉が難航したのは、気化された天然ガスのパイプラインが、液状の石油のパイプラインよりも高額の費用がかかるので、その投下資本をめぐってのせめぎ合いがあったと思われる。
このことはパイプラインが長くなれば、コスト・アップとなって採算が合わない。どれだけの距離が採算分岐点になるか、ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムはデータを示して中国側と折衝した。
天然ガスには気化状態でパイプラインで送る方法のほかに天然ガスを液化(LNG)して輸出する方法がある。液化設備に数千億円規模の投資が必要だが、遠隔地に送ってもコスト・アップにならない利点がある。
米国を中心に商業生産が確立したシェールガスは、輸出地で液化し日本などに送られてくる。このシェールガスの生産数量増加によって、米国では天然ガスの価格が大きく下落した。ロシアも無関心ではおれない。中国との交渉妥結を急いだのはシェールガスの登場が背景にあったのではないか。
だが液化天然ガスは設備投下などでまだ割高。欧州はロシア天然ガスを減らす方向で動いているが、パイプラインで気化された天然ガスを送られてくる現状の方が安上がりなのは否めない。米国からパイプラインを敷くことは不可能だから、結局は液化天然ガスに依存せざるを得ない。いまのまま安いロシア産の天然ガスの方がいいという声も聞こえてくる。
■中ロ、天然ガス契約に調印=交渉10年以上、史上最高4000億ドル
【モスクワ、上海時事】ロシアと中国は21日、ロシア産天然ガスの中国への供給契約を締結した。ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムと中国石油天然ガス集団(CNPC)が、中国の上海で調印した。ガスプロムのミレル社長によると、契約額は30年間で4000億ドル(約40兆円)。
契約に基づき、ロシアは中国に年380億立方メートルのガスを供給する。関係筋がインタファクス通信に語ったところでは、価格は1000立法メートル当たり350ドル以上。
中ロ両国は当初、アジア相互協力信頼醸成会議(CICA)首脳会議に合わせた20日のプーチン大統領と習近平国家主席の会談で最終合意を目指していた。しかし、価格面で折り合いが付かず、首脳会談後もぎりぎりの交渉を継続。プーチン大統領の上海滞在中に、長年の懸案だった契約締結にこぎ着けた。
ミレル社長によると、今回の契約は天然ガス生産で世界1位のガスプロムにとって史上最高額。現地時間21日未明まで交渉に当たり、合意に達したという。
中ロ両国は10年以上前から、天然ガス供給契約をめぐる交渉を継続。2006年に大枠で合意したが、価格面が最大の障害となっていた。(時事)
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