中国のサイバー攻撃についての報告を続けます。アメリカ政府の反撃です。日本にとっても他人事ではありません。
<人民解放軍将校5人を起訴、ついに「ルビコン」を渡った米国政府>
「中国軍当局はこのサイバー攻撃作戦で約20の産業分野の各企業から高度技術製品の設計図、製造プロセス情報、製品試験データ、ビジネス計画、価格情報、他企業取得計画などを入手した。同時にアメリカの電力、通信、エネルギーなどの公共サービスや米軍の『指揮・統制・通信』などのシステムの妨害をも試みてきた」
今回の司法省の起訴は、まさに中国人民解放軍の「61398部隊」を標的としたものだった。そしてウルフ議員らが被害を訴えた2006年という時期が中国の作戦が本格化するスタート期らしいことも、マンディアンの報告書は示していた。
■日本も標的となっていることは明白
今回の起訴は、米国政府が「ルビコン」を渡ったことを意味するとも言える。中国のサイバー攻撃に対し、一般的な警告や外交的な抗議という範囲を超えて、米国の国内刑法の適用によって厳しい刑事訴追という手段を取ることを宣言したからだ。
しかしこの中国の対米サイバー攻撃をめぐる米中両国の国政レベルでの衝突の出発点は、上記のように2006年だった。当時の米側の最初の警告発信者となった前述の2議員のうち、ウルフ議員は5月20日、今回の司法省の起訴について次のような声明を出した。
「中国のサイバー攻撃の最初の被害者の1人として、今回の司法省の措置は大いに歓迎したい。私自身が攻撃を受けたときは、全米レベルでのこの問題への意識は低かった。だが現在では中国の人民解放軍、政府機関、国有企業などが米国の官民組織にサイバー攻撃をかけ、国家安全保障の機密や産業秘密を盗んでいることは、一般米国民の間でももはや疑う余地がない状態となった。だが今回起訴された要員たちの活動は氷山の一角にすぎない」
ウルフ、スミス両氏はともに1981年から連邦議会会員議員を務めるベテランである。両議員の中国批判はときに非常に厳しく、「強硬な反中派」というレッテルを張られることもあった。だがその中国への厳しい態度こそが中国側の対米サイバー攻撃という大作戦の実態を暴いていくことに寄与したのである。
日本も中国側のこうしたサイバー攻撃の標的となっていることは明白である。だが、そのことに正面から警告を発する日本の政治家はまだ現れていないようだ。(終わり)
杜父魚文庫
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