■投資額はすでに1190億ドルを超え、なかにはシェールガス掘削ハイテク企業も
中国はリビアでの挫折に加え、南スーダンの独立による輸入石油の激減に懲りて、初めてカントリーリスクを考慮するようになったようだ。先進国で資源リッチ、セキュリティに安心感があるため安定供給が望める。
ベネズエラ、コンゴ共和国、ナイジェリア、アンゴラ、そしてイラク、イランという国々は進出しようにも西側メジャーの競合相手が少なかった。進出は速やかだったが、それからが大変、部族闘争、内紛、ゲリラ、内戦。革命、そして分離独立と続き、さすがの中国もアフリカや中南米諸国には手を焼いたようである。
となると豪とカナダが次の中国の資源戦略にとって筆頭の標的となる。
つぎつぎと中国はカナダの資源企業買収、あるいは資本参加に踏み切り、気がつけば総投資額が1190億ドルにも達していた(中国への直接投資が900-1000億ドル)、
13年末の統計で、中国は日量62雄万バーレルの石油を世界各地から輸入している。
そして13年度だけで中国の三大メジャー「シノペック」「ペトロチャイナ」「中国海洋石油」の三社は合計320億ドルを投じて石油、ガス校区を所有するエネルギー企業を買収していた。
2008年から2013年までの五年間でシノペックとペトロチャイナ二社だけでも、500億ドルを海外資源企業買収、あるいは石油ガス鉱区を保有し、掘削技術を持つ企業の株式取得に費消していた。
カナダへの投資は中国が堂々の第一位で全体の28%、第二位が米国で19%、日本の丸紅なども投資しているが、まるで目立たない。
2008年10月、シノペックはカナダ企業「タンガニカ石油」を20億ドルで買収し、完全子会社とした。
2009年8月、 ペトロチャイナは「アシアナバスカサンズ」社と組んでアルバータ石油を19億ドルで買収を試みた。
2009年6月、シノペックはアダックスペトロ社を82億ドルで買収し、100%子会社とした。
2011年10月、シノペックはディライト資源を23億ドルで買収し、100%子会社とした。
2012年7月、中国海洋石油はネクセンを153億ドルで買収した。これは過去最大級の買収である。ネクソンはカルガリーに本拠を置く石油とガス会社で、買収額のほかに同社の借財28億ドルも立て替えた。
このほか、巨大案件は枚挙にいとまがないほどで、そのあまりに迅速且つ強引で巨額を投じる動きにカナダは国家安全保障にからめて買収を拒否する動きも議会に見せたが、保守党政権は、そうして外国資本排斥には動かない。
カナダ政府に代わって反対に動いた伏兵は、カナダ・インディアンという先住民族である。反対理由は「自然環境保護」である。かれらがエコロジストらと組んで環境保護運動を展開し、中国の破壊的開発に反対している。
日本の水資源、森林資源そして自衛隊ならびに米軍基地の周辺をなぞの中国資本が買い占めているが、カナダ人の安全保障感覚からすれば、中国は遠い、という距離感から来る安心感なのだろうか?
杜父魚文庫
16147 カナダの石油ガス資源企業を片っ端から中国が買収していた 宮崎正弘

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