<[ワシントン 29日 ロイター]オバマ米大統領の2期目は、国際舞台で大仕事を成し遂げる最高の機会になると思われていたが、実際には過去の外交実績を失わないための取り組みに追われている。大統領にとって外交政策で新たな実績を残す上では不利な状況が積み重なっているように見える。
オバマ政権の外交戦略に関しては、危機のたびごとに対応がぶれる点に批判が出ている。大統領が28日に陸軍士官学校の卒業式で行った包括的な外交演説も、こうした批判を和らげる効果は乏しかった。
2年半後の退任までにすぐれた外交面の成果を挙げようとする大統領の前に立ちはだかるのは、ウクライナからシリア、南シナ海に至る非常に解決が困難とみられる数々の問題だ。
大統領が打ち出した戦略には、同盟国と共同で強力な軍事・外交手段や制裁措置を行使して国際的な指導力を発揮することなどが含まれている。だがオバマ政権の国際的な影響力は低下しているという認識を一変させるような明確なビジョンを、大統領や側近グループが持ち合わせているかどうかは定かではない。
かつて民主、共和の両政権で中東問題のアドバイザーを務めたアーロン・デービッド・ミラー氏は「オバマ氏は大胆な手を打たないリスク回避型大統領だ。そして彼は、手軽な対応策はまったく使えないような問題の数々に直面している」と指摘した。
課題リストの最上位に記されているのはウクライナだ。オバマ氏をはじめとする西側の指導者は、ロシアによるクリミア編入を阻止するという点では無力だった。せっかく1期目にロシアとの関係を立て直していったんは大きな成果をあげたとみなされたオバマ氏への風当たりは急激に強まり、共和党の反対派はずっとロシアのプーチン大統領を信頼していたオバマ氏は考えが甘いと活発に非難するようになった。
こうなった以上、オバマ氏にとって最善の結末は、ロシアがウクライナ東部を自国に組み入れるのを手控えることだろうが、その場合でも2期目の歴史を彩る実績とはならない。
オバマ氏の外交姿勢が受け身だとのイメージは、シリアの内戦悪化を見過ごしたと認識されたことが原因。昨年、シリア政府が化学兵器使用という「許されない一線」を越えた後でオバマ氏が軍事攻撃に踏み切らなかったため、他の危機でも軍事力を行使するつもりがあるのかどうか疑念が生じている。28日の演説でも、シリアの反政府勢力支援強化を表明しながら、米国の関与を限定する方針をはっきりと示した。
また周辺諸国との間でしきりと海洋上で紛争を巻き起こしている中国に対してどこまで踏み込んだ対応をするのかも、オバマ氏にとっては難しい問題といえる。
オバマ氏は28日、米国のアジアとの関係強化に向けた取り組みを進めると請け合ったものの、これまでのところあまり進展は見られない。同盟国の中からは、オバマ氏のアジア重視姿勢が本物なのかどうか疑う声も出ている。
オバマ政権の外交上の取り組みのうち、最も有望で歴史的な偉業となり得るのはイランへの働き掛けで、昨年に核開発問題に関する協議の再開にこぎ着けた。ただ、オバマ氏本人も認めるように成功の確率は高くはなく、たとえ合意に達しても議会の承認やイスラエルの支持という極めて難しい問題を乗り越えなければならない。
<反撃>
オバマ氏の外交演説は、彼や側近グループが米国の世界におけるリーダーシップを弱体化させたとの非難に対しての憤りと、そうした非難が世間一般に受け入れられることへの懸念を抱いたことから打ち出された。
この演説は政権批判への一連の反撃ののろしであり、オバマ氏は来週の欧州訪問でさらに詳細な外交方針について発言する意向だ。側近グループも国内外で発言して、オバマ氏のメッセージの援護射撃をするとみられる。
ただ最近は、与党の民主党内や以前はオバマ氏を支持していた言論人の間でも批判的なムードが強まっていて、ニューヨーク・タイムズの論説委員は演説内容を酷評した。
<2期目の試練>
2期目を迎えた米国の大統領は、特に議会で与野党勢力が伯仲して思うような立法手続きが行えない場合、外交の分野への関心を高める傾向がある。オバマ氏もこの流れに沿うなら、イスラエルとパレスチナの和平問題をもう一度手掛けたり、キューバに新たな提案を行ったりするかもしれない。
しかしオバマ氏が新しい成果を挙げられないうちに、機会の窓は閉じられてしまう可能性がある。中間選挙が近づき政権のレイムダック化が見え始めており、オバマ氏が求心力を低下させつつあるとわかれば、他国の指導者の協力姿勢は弱まっていくだろう。
さらに最近の世論調査では、少なくとも米国民の半数は国際問題に対するオバマ氏の全般的な姿勢を支持していない。
もっとも過去には、2期目に困難を克服して歴史家から認められるような外交実績を残した大統領も存在する。ロナルド・レーガンは2期目にイラン・コントラ事件で打撃を受けたが、現在では核兵器管理の面や強硬な外交姿勢で最終的に冷戦を終わらせた手腕が賞賛されている。
ビル・クリントンは1期目にルワンダの虐殺に腰の引けた態度を取ったことが汚点になったものの、その後バルカン諸国の和平に深く関与したことや、結局は成功しなかったが中東和平に野心的に取り組んだことが2期目の高い評価につながった。
反対にジョージ・W・ブッシュは、イラク戦争に対する米国民の反発のため、2期目に一度も支持率が上向くことはなかった。 (ロイター)>
杜父魚文庫
16210 オバマ米大統領、2期目の外交成果は望み薄か 古澤襄

コメント