■“別れても好きな人”にエール
「一生懸命考えます。俺は小説に題名つけるの、うまいから」
日本維新の会の分党を正式に宣言した翌日の30日午後。所属国会議員が顔をそろえる両院議員懇談会を終えた石原慎太郎共同代表は、自らが関わることになる新党の名称について記者団にこう述べた。
新たな党に参加する意向を示す元航空幕僚長の田母神俊雄氏に関しては「あの人はこれから政治の世界にコミットせざるをえないでしょ。有力な人材だと思いますよ。志も同じだね」と高く評価した。
直前の両院議員懇談会ではたもとを分かつことになる橋下氏を持ち上げることも忘れなかった。
「橋下君をここで変えてはいかんぞ。彼をトップとしてやらなければいけない」
息子のようにかわいがったパートナーを分党後も支えるよう求めた石原氏に対し、橋下氏を支持する国会議員からも拍手がわき起こった。
互いの知識や実力を評価しながら別れを決意した二人の代表。所属議員からは「われわれのようなばか息子たちを指導していただき感謝申し上げます」「二人の“親方”が結論をだした以上は従いたい。熟慮断行だ。別れても友情の交わりは続けさせていただきたい」との決意表明があった。
一方、たった二人だけで党の運命を決めたプロセスに対しては、若手・中堅から批判の声も相次いだ。
衆院憲法審査会で存在感を示す三木圭恵氏は涙を流しながら、「執行部はもっと新人議員の気持ちをくんでほしかった。6月に開かれる党のパーティー券も関係者に売っているんですよ。私たちは何も聞いていないし、分党も両代表だけで話しておしまいですか?」と取り乱した。
ある参院のベテラン議員は「石原さんが『あれがやりたい』『これがやりたい』と言うのは結構ですが、(分党という結論を選んだことは)器が小さい。情けない」と持論を展開。別の議員は「結党から1年半。最大の問題は党のガバナンスだった。政党は両代表のものではない。私は石原、橋下のどちらにもついていきたくはない」と訴えた。
こうした中間派の中に“第三の道”を模索する動きもあるが、党内では少数派だ。分党を受け入れる石原派、橋下派の新党結成を見据えた多数派工作は着々と進んでいる。
石原氏に近い維新やみんなの党の一部が参加する自主憲法研究会は30日、国会内で初会合を開催。発起人で東京都杉並区長も務めた維新の山田宏氏は「これからできる新政党とみんなの党となるべく早い時期に統一会派を組んで、集団的自衛権などさまざまな課題について協力をして、国民の期待に応えていくということが国会議員としての大きな責務と考えている。そういう方向に働きかけていきたいと考えている」と述べ、野党結集に向けて尽力する意向をアピールした。
橋下氏も石原氏が反対した結いの党との合流を起爆剤に野党再編を推し進める考えだ。盟友の松井一郎幹事長(大阪府知事)は「(新党の代表も)橋下代表で何も異論ないと思う」と強調する。ただ、橋下氏は別れの痛手を知るだけに、安易な楽観論には傾いていないようだ。
「前原さんには民主党の一部を引っ張っていってもらいたいですね。一つ塊を作らないといけないのではないかと感じている民主党の方も多いと思います」
橋下氏は30日、大阪市内で記者団にこう語り、野党再編に前向きとされる前原誠司前国家戦略担当相のリーダーシップに期待感を示した。
一方、「自主憲法制定」という、たった一つの言葉に対する見解の相違で石原氏との別離を余儀なくされただけにこうも続けた。
「民主党の内部では亀裂が深いと思います。いまだに集団的自衛権の行使について、安倍晋三首相が出されている問題提起に対しスタンスが固まっていないですしね。そこは整理をしてもらってですね、国民のために自民党に対抗できる、与党に対抗できる、チェック機能を働かすことのできる野党を作るべきだと思いますよ。おおよその方向性で分かれた方がよいのではないでしょうかね」(産経)>
杜父魚文庫
16220 石原氏「橋下くんを変えてはダメだ」 古沢襄

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