<中国経済の動向について世界のアナリストは注目している。多くのアナリストの予想に反して、五月の輸出は増加傾向を示し、その反面、国内経済の低迷の影響で輸入は落ち込んだ。
ことしに入って輸出と輸入の中国貿易統計にはゆがみが生じていることになる。輸出増を中国の当局者が過大評価すれば、「成長の下振れリスクは低下し、幅広い刺激策の可能性はより少なくなった」(シティグループ)ことになろう。
しかし輸入の予想外の減少は成長へのリスクを浮き彫りにしている。当分の間、中国経済の動向から目を離せない。
(ブルームバーグ)中国の5月の輸出は市場予想を上回る増加を示し、景気減速の影響を和らげている。輸入の予想外の減少は成長へのリスクを浮き彫りにした。
税関総署が8日発表した5月の輸出 は前年同月比7%増。ブルームバーグ・ニュースがまとめた市場予想の中央値は6.7%増だった。輸入は同1.6%減少。予想中央値は6%増で、42人のアナリストで減少を予想した人はいなかった。この結果、5月の貿易黒字は359億2000万ドルに達した。
中国の指導者は予想を上回る輸出を受け、欧米諸国の需要が成長を支援し、より力強い刺激策の必要性は低下すると、自信を強める可能性がある。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の中国チーフエコノミスト、ルイス・クイジス氏(香港在勤)は「輸出の数字は政策当局者にとって前向きなニュースで、われわれは世界の需要の勢いが徐々に回復する中で、今後数カ月間に輸出の堅調な伸びが続くと予測している」と述べた。一方、輸入データは国内経済がかなり低迷していることを示していると指摘した。
中国国家統計局は今週、5月の物価統計や工業生産、小売売上高などを発表し、不動産市況低迷や政府による信用の伸び抑制の中での国内経済の状況がより明確になる。中国人民銀行(中央銀行)は5月のマネーサプライ、新規融資、経済全体のファイナンス規模を公表する。
■5月は統計にゆがみなしとの見方
今年に入ってからの中国貿易統計にはゆがみが生じていた。資本取引を隠すために不正な送り状が使われた影響で、昨年最初の数カ月の数字が実際より膨らんでいたためだ。
RBSのクイジス氏によると、5月の貿易統計の数字が恐らくゆがみの影響がない最初の「クリーンな」データになったとみられる。
シティグループの中国担当シニアエコノミスト、丁爽氏(香港在勤)は「輸出改善で成長の下振れリスクは低下し、幅広い刺激策の可能性はより少なくなった」と語った。
中国の輸出は2月、3月と連続で減少した後、4月に0.9%増と予想外のプラスに転じていた。43人のアナリストの予想レンジは1.8%減から10.4%増だった。
宝山鋼鉄の何文波会長が4月に中国国内の業務環境はかつてない厳しい状況にあると指摘する中で、同国の鉄鋼輸出は急増している。
5月の輸入 は予想中央値では6%増で、予想レンジも0.3-13%増だったが、実際には減少した。貿易黒字は2009年1月以来の高水準。予想中央値は226億ドルだった。
マッコーリー証券の中国経済部門責任者、胡偉俊氏によると、輸入減少の一部は金属を担保とした融資について中国政府が調査していることなどが原因の可能性がある。同氏が電子メールを送付した。(米ブルームバーグ)>
■中国の5月輸入は予想外の減少
<[北京 8日 ロイター]中国税関当局が発表した5月の貿易統計によると、輸出は前年同月比7%増、輸入は同1.6%減となった。市場予想は輸出が前年比6.6%増、輸入は同6.1%増だった。4月は輸出が0.9%増、輸入が0.8%増だった。
貿易収支は359億ドルの黒字となり、前月の黒字額185億ドルから大幅に拡大した。市場予想は226億ドルの黒字だった。
RBS(香港)のエコノミスト、ルイス・クイジス氏はノートで「われわれは5月の貿易統計が政策スタンスを大幅に変更するものになるとは考えていない」と指摘。「輸出がかなりポジティブとなる一方、輸入が示唆する内需の弱さは成長支援策に対する圧力を高め続ける可能性がある」と解説した。
アナリストらはこれまで、軟調な貿易統計について、比較対象となる前年が偽装輸出によって水増しされていたことが一因だと指摘していた。当局は昨年5月からそうした活動を取り締まっている。
税関当局報道官の鄭躍声氏は国営テレビに対し、「今回の統計は輸出伸び率が通常の水準に戻ったほか、引き続き改善することを示している」と述べた。
1─5月の輸出と輸入を合わせた貿易総額は前年同期比0.2%増で、通年目標の7.5%には遠く及ばない水準にとどまっている。(ロイター)>
杜父魚文庫
16315 輸出増と輸入減で揺れる中国経済の動向 古澤襄
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