16362 イラク:過激派組織 バグダッドまで80キロ政府側と衝突   古澤襄

【カイロ秋山信一】イラク北部に侵攻したイスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」は13日、バグダッド北東約80キロの地点まで侵攻し、政府側と衝突した。マリキ政権は政府軍に加えてシーア派民兵も動員し、首都を死守する構えだ。
一方、油田地帯がある北部キルクークをクルド自治政府の治安部隊が混乱に乗じて掌握した。マリキ政権と自治政府は油田の利権を巡って争ってきた経緯があり、政権側はISILだけでなくクルド側の動きにも神経をとがらせている。
イラクからの報道によると、ISILは13日、バグダッドの隣県ディヤラ県バクバ近郊のミクダディヤで政府側と戦闘を開始した。ISILが制圧した北部モスルやティクリートはスンニ派住民が大半を占めるが、バクバにはシーア派住民も多く、両派が混在している。バクバが陥落すれば、政権の支持基盤であるバグダッド以南のシーア派住民にパニックが広がる恐れもあり、政権側は防備を固めている。
内務省は13日、爆弾テロなどを警戒し、首都で治安活動を強化すると発表。南部では首都防衛のためシーア派民兵の動員も進んでいる。シーア派の最高権威シスタニ師の側近も住民に武器を取って戦うよう呼びかけた。
一方、イラク有数の油田があるキルクークでは、クルド自治政府の治安部隊が治安を掌握した。北部では政府軍が拠点を次々と放棄し、ISILの急進を許す要因となった。治安部隊の報道官は声明を発表し「治安の空白を埋めるため部隊を派遣した」と強調した。
しかし、クルド治安部隊は、自治区と隣接するディヤラ県北部にも進駐したとの情報がある。自治政府はキルクークなど自治区周辺地域も編入するよう中央政府に求めている。さらに自治政府は今年5月、自治区の石油を中央政府を経由せず、トルコを介して輸出する事業を開始。「国庫収入の減少につながる」と主張するマリキ政権と対立してきた経緯があり、クルド人が実効支配地域を拡大しようとしているとの懸念も出ている。(毎日)
■イラク、クルド部隊が北部主要都市掌握―無政府状態が深刻化
【バグダッド】イラクのクルド自治政府の治安部隊は12日、石油資源豊富な北部キルクーク県の首都を掌握した。イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」はシーア派の聖地2都市への進攻を宣言するなど、イラクは全面的な無政府状態に陥りつつある。
キルクーク県知事事務所の職員によると、クルド自治政府の治安部隊は県都キルクークの主要政府施設を掌握した。マリキ首相率いるシーア派主体のイラク中央政府の部隊は、スンニ派武装勢力の進攻を恐れてキルクークの基地から撤退した。
ISISは国際テロ組織アルカイダ系の武装組織で、キルクーク県西部を依然制圧しているという。
ISISはこの3日間で電撃的に勢力を拡大。イラクは米国などによる2003年の侵攻後に発生した宗教対立以来の危機にひんしている。
米政府関係者は11日、空爆の可能性への言及を控えた。ある政府関係者によると、オバマ政権は複数の選択肢を検討しているが、まだ結論は出ていない。
クルド自治政府の治安部隊がキルクーク県への展開を決めたのは、イラクが無政府状態になりつつあることを示す最新の兆候だ。キルクーク県ではクルド人が多数派を占める。イラクの総人口3250万人に対するクルド人の割合は約20%だ。
これとは別にISISは12日、カルバラとナジャフに進攻すると宣言した。両都市はイラクの人口の6割を占めるイスラム教シーア派の住民にとって、メッカ、メディナ(サウジアラビア)と並ぶ聖地とされる。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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