■中国空軍の恥さらし
「よく喋るオウムは飛ぶのがうまくありません」とは飛行機を発明したライト兄弟の言葉だ。ライト兄弟は後年、スピーチを依頼されることが多かったらしく、こう言って自らの口下手を詫びたという。つまり「自分達は空を飛ぶ自信はあるが、おしゃべりの自信はない」ということである。
実はこの言葉は飛行機乗りにとって普遍の真理を含んでいる。飛行機乗り、特に戦闘機乗りは実に孤独な職業であって、大空にあって基本的に一人なのである。勿論、通信による会話は可能だが、お喋りに打ち興ずるパイロットは余り褒められたものではない。
従って日本の航空自衛隊を含めて世界の優秀な空軍は皆、無口であるのを美徳とする。戦闘機乗りは黙々と緊急発進し、偵察機は黙々と情報収集し、レーダーは黙々と空域を監視し、必要最低限の指令と報告しかないのが、空軍の世界なのである。
ところが中国空軍の最近のお喋り振りときたら、世界中の空軍関係者の失笑を買うのに十分な程である。「こんなに喋る中国空軍はきっと飛ぶのはうまくないだろうな」という訳である。
5月24日に中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近した。日本は危険行為として抗議したが、中国国防省は翌日、あろうことか日本の抗議に反論したのである。もし中国が自ら主張する防空識別圏を確保しているなら、反論の必要はない筈である。ただ黙々と防空識別圏の確保維持に努めるだけであろう。つまり防空識別圏を確保していないと自ら認めている様なものであり、空軍としてはこんな声明を出すのは本来恥ずかしい事なのだ。
しかも6月11日にも中国戦闘機は自衛隊機に異常接近し、翌日、日本の抗議に反論する形で日本の主力戦闘機F15の飛行映像を公開した。
この映像はおそらく中国軍の偵察機が撮影したものであろう。こうした映像を黙々と撮影し、情報部で黙々と分析し情報を蓄積していくのが世界の空軍の常識であって、それをすぐさま公開されたら、情報収集の意味はなくなってしまう。私が中国空軍の軍人ならこんな国防省広報官は直ちに、たたき斬られているだろう。
しかもその映像のF15の飛行の見事な事、まるで航空自衛隊の質の高さを宣伝しているプロモーションビデオかと思われる程である。プロの飛行機乗りは相手の飛行を一目見るだけでもその技量を見抜く。おそらく世界中の空軍関係者は空自の技量の高さに改めて感嘆したであろう。
それに引き換え自衛隊機に異常接近してきた中国戦闘機の飛行振りときたら、自衛官が呆れる程の技量であったらしい。日本が危険だと抗議したのは捏造でも誇張でもない。隊員は心底、危険を感じたのである。中国空軍軍人に告ぐ。こんなアホな広報官は一刻も早くクビにして、もっとまじめに訓練に励め!
杜父魚文庫
16382 鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 宮崎正弘

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