イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」は16日、イラク北部の主要都市タルアファルを政府軍から奪取した。マリキ首相の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになり、ISISの侵攻を食い止め押し返すことができるどうかについて、あらためて疑問が生じている。宗派抗争の新たな前線が生まれる恐れが出ていることから、隣国のトルコは警戒感を強めている。
一方、ホワイトハウスの報道官ジョシュ・アーネスト氏は、米国とイランが早ければ16日にイラク情勢について話し合いを持つだろうと述べた。イランの核開発をめぐり同日からウィーンで開催される、米欧など6カ国とイランの協議に合わせて、同国との話し合いが行われる可能性があるという。
あるイラン政府高官は同日ウィーンでウォール・ストリート・ジャーナルに対し、イラク問題に関する米国との2国間協議はこれまでのところ行われていないと語った。イランは公表されている米国と欧州連合(EU)との3者協議を行っただけで、「議題も核問題にとどまった」という。
ケリー米国務長官は同日、イラクのスンニ派過激分子による軍事攻勢についてイランと話し合う可能性があるとし、イランとの軍事協力の可能性も「排除しない」と述べた。
一方、ホワイトハウスは軍事面でイラクと協調する可能性を否定した。アーネスト氏は「イランとの話し合いに軍事面での協調は含まれない」とし、「われわれは、イランと軍事行動での協調を図ることに関心がない」と述べた。
一方、クルド人部隊やイラン革命防衛隊などマリキ氏を支持する部隊は、ISISが先週モスルを制圧したことから、イラク北部の防衛に必死だ。モスル西方とシリアとの国境近くで戦闘が行われているとの未確認報道がある。
イラン政府系の通信社は16日、イラン革命防衛隊の精鋭であるコッズ部隊のイラン兵1人がイラク内でのスンニ過激派との戦闘で死亡したと報じた。
また、ISISが先週末にモスル周辺で政府軍兵士を大量殺害したとの報道について、イラク政府当局者は調査を続けているとしながらも、戦闘中で事実を把握するのは難しいことを認めている。
ピレイ国連人権高等弁務官は、「シリアでのISISの深刻な国際犯罪を示す十分な記録がある」として、ISISに「厳しい監視の目」を向けていると述べた。
クルド人部隊の指導者は、クルド人部隊がモスル北西部にあるシリアとの国境の町ラビアを制圧したと発表した。事実だとすれば、ISISはシリアから援軍を得る重要ルートを失いかねない。
タルアファルでは、ISISが15日に攻勢を掛け砲撃を浴びせ、16日午前にISISが制圧した。ただ、ISISがタルアファルの全ての地区を掌握したかどうかは分かっていない。
イラク政府軍は奪還に自信を示しているが、全面反撃が準備されているのかどうははっきりしていない。タルアファルは、クルド人居住地域の端にあり、スンニ派とシーア派で二分されている。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫
16401 スンニ派組織、イラク北部の要衝タルアファル制圧 古澤襄

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