■イラク大混乱の果ては「三分割」の選択しかないのでは?
ケリー国務長官はバグダット入りし、首藤防衛のためにオバマは特殊部隊を送った。だがイラク政府軍の士気は低く、敗色が濃くなって、中国はイラク南部の「安全地帯」からも石油エンジニアの引き上げを開始した。
イランは革命防衛隊をイラクへ派遣すると言いだし、バグダット政権は志願兵をカネで集めた。しかししょせん志願兵は訓練不足。そのうえ武器不足である。
ISISはシリアに投入していた外人部隊をイラクへ転戦させ、まもなく首都へ大攻勢をかける構えだ。
この時局多難のおりに、オバマ大統領補佐官のライスは「ゲイの権利拡大を世界に広めよう」などと安全保障、国防とは無関係の演説をしている。ライスが国務長官になれなかったのは、この資質である。議会公聴会で指名承認が難しいため、オバマは議会承認の必要がない補佐官ポストを与えたのだから。
さてイラクの構造を複雑に図式化してみせたのは今秋のTIME(2014年6月30日号)。
第一に米国とイランは対立するのにイラク政府防衛では利害が一致している。
第二にシリアのアサドを支持しているのはイランとイラクとシーア派の武装組織であり、そのイランを封じ込めているのが米国と湾岸諸国。
第三にアサド政権を守ろうとしているが湾岸諸国とスンニ派武装組織。シリアに協調的なのがトルコとクルド族で、これら複雑にして輻輳した利害関係が絡み合いながらもISISを駆逐するために共同戦線を張ろうとしているのが米国、イラン、イラク政府とクルドという「野合」の構造である。やっぱり国際情勢は複雑怪奇。
杜父魚文庫
16438 マリキ(イラク政権)を米国が見限るとは言っても、ね。 宮崎正弘

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