7月1日、北京で日朝の政府間協議が行われ、北朝鮮側から設置するとされる「特別調査委員会」の組織や権限などについて説明を受ける。菅官房長官は「拉致問題や日本の特定失踪者の交渉ごとで極めて人道的なことだ」とこの政府間協議を重視する日本政府の立場を明確にしている。
2004年の再調査で北朝鮮が不誠実な回答を見せて以来、当事者の拉致被害者の家族たちの気持ちを思うと今回の政府間協議が最期の機会と切迫感を持って期待するものがある。
同じような気持ちでシベリアに拉致・抑留され、無事を祈る家族の願いも空しく父親の死亡告知書を手にした昭和24年冬のことを想い出している。
一片の厚生省発行の「公報」なるものを信じることは出来なかった。昭和22年からソ連抑留者の帰国が行われ、厚生省は帰国船の上陸地で聞き取り調査を行っている。「公報」なるものはこの聞き取り調査だけによるものだから、その信憑性は疑わしい。事実、父親の死亡日は公報では昭和21年5月3日、私がシベリアのウランウデ市当局者に調べて貰った台帳では5月6日と食い違っていた。
戦友たちの記憶が正しいか、ソ連の市台帳が正しいかを論じるつもりはない。私は公報を手にしても父親の死を信じることは出来なかったからである。ようやく父親の死という現実を受け止める気になったのは、半世紀近くの歳月を経ている。家族の気持ちというのはそういうものである。
私の場合はウランウデ944特別軍病院墓地に直接行って、ステンレスの「古澤玉次郎」の簡単な墓碑(ロシア文字と日本文字)を発見できたので、否応なしに父親の死という現実に向き合うことになった。
茨城県遺族会が主催したシベリア墓参団は33人、シベリア各地の日本人墓地を巡る”祈りの墓参”だったが、家族の墓を探し当てたのは私ひとりだけであった。それでも同行した遺族たちはわがことのように喜んでくれて、お線香を立てお供物を供えてくれた。僧籍のある墓参団長は即席のお経を読んでくれた。ステンレスの墓標は剥がして肌身につけて祖国に持ち帰ることにした。
その数年後、再度、ウランウデ944特別軍病院墓地を訪れている。二度目のシベリア墓参で最高齢者ということで私が墓参団長になった。今度は厚生省主催ということもあって、遺族墓地とのロシア側台帳との照合も進んでいた。とはいえ半世紀以上も経った今日、日本人墓地の上に都市計画で集団住宅が林立していたり、逆に人造湖の下に沈んでいたり、ロシア側台帳では探せない現実が加わっている。
■日朝協議予定どおり ミサイル改めて抗議 NHK
日本と北朝鮮の政府間協議が来月1日、中国の北京で開かれ、日本側は、拉致被害者などの全面的な調査を行うため、北朝鮮が設置する「特別調査委員会」の組織や権限などについて説明を受けることにしています。
また、北朝鮮が29日に弾道ミサイルを発射したことを取り上げ、改めて抗議することにしています。北朝鮮は29日の朝、朝鮮半島の東岸から複数の弾道ミサイルを日本海に向けて発射しました。
政府は、弾道ミサイルの発射は国連安全保障理事会の決議などに違反しているとして、29日に北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議するとともに、30日に安倍総理大臣や関係閣僚が今後の対応を協議することにしています。
ただ来月1日、中国の北京で開催することで合意している北朝鮮との政府間協議については、菅官房長官が「拉致問題や日本の特定失踪者の交渉ごとで極めて人道的なことだ」と述べるなど、予定どおり行うことにしていて、日本側は、この場で弾道ミサイルの発射を取り上げて改めて抗議し、国連安保理決議などを順守するよう強く求めることにしています。
政府間協議には、日本側から外務省の伊原アジア大洋州局長らが、北朝鮮側から、ソン・イルホ日朝国交正常化担当大使らが出席する予定で、日本側の代表団は30日、北京に向かうことにしています。
今回の政府間協議で、日本側は、拉致被害者などの全面的な調査を行うため北朝鮮が設置する「特別調査委員会」の組織や権限などについて、北朝鮮側から説明を受けることにしています。
そして、北朝鮮の説明を日本に持ち帰り、あらゆる機関を対象に調査する権限が与えられているかなど、「委員会」が実効性のある調査を行える組織かどうか慎重に見極めたうえで、日本独自の制裁措置の一部解除を判断することにしています。
「特別調査委」の焦点は政府は来月1日の政府間協議で、拉致被害者などの「特別調査委員会」について北朝鮮側から説明を受けることにしていて、焦点は「特別調査委員会」にどのような「権限」が与えられているかです。
2004年に北朝鮮が拉致被害者の再調査を行った際、北朝鮮側は「拉致問題には特殊な機関が関わったため調査が難しかった」などと説明して、日本側が納得できる調査結果を示さなかった経緯があります。
日本政府としては、今回の調査が同じような結果に終わるようなことがあってはならないとして、「委員会」に、北朝鮮国内のあらゆる機関を対象に調査できる強い「権限」が与えられ、調査の実効性が確保できるかどうかを見極めたいとしています。
政府関係者は、委員会がキム・ジョンウン第1書記の直属の機関であるかどうかや、北朝鮮の秘密警察に当たる「国家安全保衛部」の幹部らがメンバーに入っているかどうかといった点に注目しています。(NHK)
杜父魚文庫
16462 日朝政府間協議とシベリア抑留 古澤襄
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