■東アジア秩序のシフト反映
中国と韓国の首脳は3日、両国関係を強化することを約束した。この日は日本が北朝鮮に対する経済制裁の一部緩和を発表している。この2つの動きは、中国と日本がその力を誇示しようとしている東アジア地域における国家関係のダイナミズムのシフトを浮き彫りにしている。
ソウルでは、中国の習近平国家主席と韓国の朴槿恵大統領が3日、一緒に並んで記者会見し、両国が二国間自由貿易協定(FTA)交渉で年内に妥結するよう努力すること、中国の金融市場への韓国投資家のアクセスを拡大することを明らかにした。
習主席の韓国公式訪問は、日本が東アジア地域における軍事的な役割を拡大する決定(集団的自衛権の行使容認)を下した週でもある。この動きは韓国と中国に警戒感をもって見られている。習主席はまた、韓国訪問によって、中国最高首脳として長年の同盟国である北朝鮮を最初に訪問するという伝統を破った。習主席は権力の座に就いて1年以上経過するが、まだ北朝鮮を訪問していない。
東京では、これより数時間前、安倍晋三首相が、数十年前に北朝鮮に拉致された日本人の消息の調査開始の見返りに、北朝鮮に対する制裁措置を緩和するなどの日朝合意内容を発表した。日本は依然として国連決議に基づく制裁は継続する方針だが、今回の独自制裁の緩和は、米国と韓国を中心とする国際社会が北朝鮮の核とミサイル開発プログラムを非難する共同戦線を維持しようとする中での動きだ。
一部のアナリストは、中韓そして日朝のこうした合意について、長期的な戦略的、経済的目標をめぐる駆け引きを反映しており、それぞれの国の立場が突然あるいは根本的に変化したものではないと見ている。にもかかわらず、3日の一連の出来事は、シフトしつつある東アジア地域秩序が明確な形で浮き彫りになった希有(けう)の例だ。
外交上の駆け引きはまた、米国自身のアジアにおける同盟関係にも影響する公算が大きい。習氏はソウル訪問によって、冷たい日韓関係に乗じ、アジアにおける米国の2大同盟国である日韓両国の関係を一層混乱させようとしている、と外交筋やアナリストたちはみている。
米マンスフィールド財団のフランク・ジャヌージ理事長は「中国は米国と日本から韓国を引き寄せる機会だと感じており、増大する経済的影響力を利用して東アジアにおける中国の優位性を強調するだろう」と述べた。
米国務省のサキ報道官は2日、北朝鮮に対する日本の制裁解除の可能性についての質問にコメントしなかったが、「米国は透明性のあるやり方で拉致問題を解決しようとする日本の努力を引き続き支持する」と述べた。一方、中国外務省は3日、日本政府の(対北朝鮮)プランから生じるかもしれないいかなる雪解けも歓迎すると語った。
東アジア各国の立場見直しの動きは、中国の世界的な台頭の中でこれら諸国が自国の役割を交渉合意しようと試みる中で、 数年前から進行中だった。過去10年間、日本の経済不振を受けて、韓国は中国との経済関係構築を進め、現在では韓国最大の貿易相手国だ。韓国はまた、朴大統領の下で、北朝鮮に対処する上で中国を障害ではなくパートナーだと認識するようになった。
一方、北朝鮮は、日本を長年にわたって仇敵とみなしてきたが、中国、そして韓国との関係がいずれも悪化しているのを受けて、是非とも確保したい資金のため日本に接近した。
確かに、長年培われてきた各国の立場で変わっていない部分もある。例えば習主席と朴大統領は首脳会談後、北朝鮮の核プログラムへの対応方法で根本的に異なるアプローチを見せた。習主席は北朝鮮に核兵器を断念する誘因を与えるため対話の再開を強調した。これに対し、韓国は北朝鮮の行動が先決、つまり北朝鮮が核の野心を恒久的に断念することを誠意をもって見せるべきだとの立場だ。
中国はまた、韓国への接近にもかかわらず、北朝鮮指導部に対する圧力を強化する公算は小さい。中国の長年の政策は、北朝鮮が内部崩壊してこの地域を不安定化させることがないように保証することであり、その根本的政策が大きく変化したと見る向きはほとんどいない。
韓国はどうか。韓国は、北朝鮮からの攻撃に対する防衛を米国に依存しており、米国との防衛同盟を犠牲にしてまで中国に接近することはないと強調するのに躍起だ。米国は韓国に2万8500人の軍隊を駐留させている。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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