ベトナムとアメリカの急接近、では具体的になにが起きるのか。 アメリカ側の専門家パトリック・クローニン氏の政策提言の紹介です。
<ベトナム戦争の記憶は封印、米国に助けを求めるベトナム今や中国が「共通の敵」に>
(1)米国とベトナムは安全保障対話を強化して、中国の南シナ海での無法な行動に代償を払わせる新戦略を構築する。この新戦略は、両国が協力し、中 国に対して直接的と間接的、軍事と非軍事、長期と短期のそれぞれ両面からの圧力や制裁を加えることを目的とする。この対話のためにベトナム政府は緊急に高官をワシントンに派遣する。
(2)米国とベトナムが共に参加する「拡散防止構想(PSI:米国主導で2003年に発足した大量破壊兵器拡散防止の国際連携組織)」を利用して、米ベトナム両軍の合同演習や米軍部隊のベトナム派遣を進める。PSIの規範を使えば、両国の公式の合意を必要とせずにベトナムで米軍基地開設することができ、対中抑止策として即効性がある。
(3)南シナ海では、フィリピン、マレーシアも中国に威嚇されている。それらの国とベトナムが海洋安保協力を進めるための3国間対話を始めることを、米国は奨励する。米国は、ベトナムが日本、インド、オーストラリアからの自国海軍の警備艇や潜水艦の増強のための協力を得ることを支援する。特にベトナムのキロ級潜水艦6隻の配備を支援する。
(4)米国はこれまで保持してきたベトナムへの致死性兵器類の禁輸を解除する。米国はベトナム政府の人権弾圧への抗議の一環としてこの禁輸を実施したが、中国の軍事威嚇への対策として、禁輸の解除が必要となった。特に水雷や短距離巡航ミサイルはベトナムの抑止力を強化し、中国の軍事威嚇を抑える効果を発揮する。
(5)米国は、ベトナムが他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と協力して、南シナ海での航行の自由や適切な行動規範のための規則を改めて作成するよう働きかける。これらの規則は拘束力を持つ行動綱領としてできるだけ早く採択されるべきである。国連海洋法の規則に基づく国際裁定もこの綱領に結び付けられるべきだ。
以上の具体的な政策提言は、いずれもまず米国政府に向けられたものである
米国側でのこうした動きに呼応するように、ベトナム側からも非常に切実な米国への同盟の求めが発表された。ベトナム首相の顧問を務めた学者、ツオン・ライ氏が「ニューヨーク・タイムズ」(7月13日付)に寄稿した「ベトナムの米国への遅すぎた同盟の呼びかけ」と題する論文である。この論文でライ氏は、冒頭で中国を「われわれの現在の敵」とはっきり記していた。
米国とベトナムとの間に、明らかに新しい絆が結ばれそうなのである。
杜父魚文庫
コメント