■墜落原因 フライトレコーダーがカギ
オランダ政府は22日、ウクライナ東部で墜落したマレーシア航空17便の事故原因調査を主導すると発表した。だが事故調査団はまだ墜落現場に入ることはできていない。周辺地域で戦闘が展開されているためだ。
紛争区域に墜落した民間航空機の事故調査は極めて珍しく、調査の態勢づくりには時間がかかっている。しかし、墜落から5日たったが、調査官たちがどれほど効率的に調査できるかは依然、不透明だ。ウクライナ軍によるこの地域への攻勢が進行中で、墜落現場での安全は確保されておらず、現地に残されている証拠が改ざんされているとの批判も出ている。
オランダのルッテ首相は、同国がマレーシア機撃墜の調査を主導すると述べた。同首相は「われわれの優先課題は、オランダ国民の遺体回収、可能な限りの調査、そして正義の実現だ」と述べた。マレーシア機はアムステルダムからクアラルンプールに向けて飛行していた際に撃墜されたもので、乗員乗客298人が死亡した。
収容された犠牲者の遺体は、ウクライナ東部の反政府勢力支配地域から灰色の保冷車5両を連ねた列車で、同国政府の支配するハリコフに向け輸送された。ハリコフでは多国籍の検視専門家チームの管轄下に置かれた。検視専門家たちは、黙とうしたあと、遺体の一部を戦車工場内に設けられた臨時の検視所に移送した。
ルッテ首相によると、遺体は23日にオランダのアイントホーフェンに空輸され、そこからアムステルダム南東のヒルフェルスムの軍事基地に移送して身元確認を行う。
欧州安保協力機構(OSCE)の代表団の報道官は、一部の遺体はまだマレーシア機の残がいの中にあると述べた。
マレーシア機にはオランダ国籍の市民193人が搭乗しており最も人数が多いことから、調査を主導することになった。国際法では、ウクライナに調査を主導する権利があるが、これを他の機関ないし国に移譲することもできる。
現地調査をめぐりウクライナ政府と親ロシア派の間の交渉が行き詰まっていたが、22日にはロシア政府も親ロシア派も調査に協力すると表明した。西側当局者はマレーシア機を撃墜したのは親ロシア派分離主義者だとみている。ロシアは、撃墜したのはウクライナだった可能性があると反論している。
ロシアのプーチン大統領は22日の演説で、西側指導者がウクライナを「不安定」にしていると非難しながらも、ウクライナ東部の分離主義者に事故調査への協力を促すつもりだと述べた。
マレーシア機の墜落原因を探るには、現場での残がいなどの証拠物件と、飛行記録を録音したフライトレコーダーがカギとなる。
墜落事故対策の責任者であるウクライナのグロイスマン副首相は、いわゆるブラックボックスが遺体を運搬した列車に積み込まれていると述べた。
このブラックボックスは、親ロシア派勢力の指導者が前夜、マレーシア当局者に手渡したもので、これによって事故機の機械的な故障の可能性を完全に排除できるものとみられている。また、パイロットたちが墜落前に、ミサイル発射を目撃したか、あるいはミサイルが接近していることを知っていたのかについても情報が提供される可能性がある。
英国のキャメロン首相は、オランダ当局の要請に基づき英ファーンバラにある政府の航空事故調査部門(AAIB)がこのブラックボックスからデータを取り出し、解析すると発表した。ベルギー国防省の報道官は、同国がブラックボックスを引き取るためウクライナの首都キエフに飛行機を派遣したと述べた。英国には23日午前に到着する見通しだ。
墜落現場の調査については、親ロシア派勢力のリーダー、アレクサンドル・ボロダイ氏が、現場周辺の停戦を一方的に宣言、国際事故調査団とともにオランダなど諸外国の警備要員が現地入りするのを容認すると述べた。
オランダは23日にもウクライナから調査を引き継ぎたい意向だが、調査団の安全が確保できないため現地入りが遅れている。ウクライナ軍が親ロシア派への攻撃を続けているためだ。
事故直後は親ロシア派が警備していた墜落現場は、23日にはほとんど無防備になっていた。コックピットの落ちた場所も、誰でも近寄れるようになっていた。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
杜父魚文庫
16654 オランダが調査主導へ マレーシア機墜落事故 古澤襄

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