■来秋の自民総裁選にらむ-内閣改造
9月の内閣改造・自民党役員人事に向け、安倍晋三首相と石破茂幹事長の駆け引きが始まった。首相は「ポスト安倍」の有力候補と目されている石破氏に対し、新設する安全保障法制担当相に就くことを打診。石破氏を閣内に取り込むことで、来年秋の党総裁選に向けた動きを封じる狙いがある。石破氏は入閣に慎重で、石破氏の処遇が当面の焦点だ。
関係者によると、首相は24日、首相官邸で会談した石破氏に安保担当相のポストを提示したが、石破氏は即答しなかった。首相の意向はこれ以外にも間接的に石破氏に伝えられているが、29日の段階で石破氏は応じていないという。
安保担当相は、来年の通常国会に一括提出される安保関連法案の国会答弁を担う重要な役回り。首相は、安保政策に精通している上、閣僚経験が豊富で答弁に定評がある石破氏が適任と判断したとみられる。
首相にとって石破氏への入閣打診は、長期政権をにらんだ布石でもある。来年の党総裁選に関しては今のところ石破氏以外に有力な対抗馬は見当たらず、石破氏の動きを封じ込めることができれば、再選への道が開けるとの思いがある。
ただ、石破氏が安保担当相就任を断った場合、首相には悩ましい状況になる。首相の出身派閥の町村派幹部は29日、首相が勝利した2012年の総裁選で石破氏が敗れながらも地方票で他候補を圧倒したことに触れ、「地方での石破氏人気は根強い。石破氏に無役でいいと言われて困るのは首相だ」と指摘した。
石破氏は29日、自身に近い議員に電話で「今のままでは(首相の打診は)受けられない」と心境を説明した。外相など重要閣僚との兼務ならまだしも、「答弁専門」とされる安保担当相への転身はプラスにならないと踏んでいるようだ。
もっとも石破氏の周囲には、「無役になっても構わない」との強硬派と、「勝負どころはもう少し先。安保担当相でも引き受けた方がいい」との柔軟派が混在している。
首相と石破氏の駆け引きを横目に、党内では幹事長が交代した場合の後任への関心も出始めた。首相の盟友である麻生太郎財務相兼副総理や、同郷で気心が知れた河村建夫選対委員長、首相を支える立場に徹する岸田文雄外相らの名がささやかれている。(時事)
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